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「筋トレ週2~3日」国が健康のためのガイドライン案を策定

厚生労働省の専門家検討会は、健康づくりのための身体活動・運動について、11月27日にガイドライン案を取りまとめた。身体活動・運動に関するガイドラインの策定は平成元年に始まった。直近では、10年前に「健康づくりのための身体活動基準2013」が策定されていたが、「日常生活における歩数」や「運動習慣者の割合」といった指標に改善が見られなかったことから、今回は、近年の科学的知見を反映させた10年ぶりの見直しが行われることとなった。

【写真】週5~7日で鍛える、ゆりやんレトリィバァの筋量豊富なレギンス姿

WHOが令和2年に公表したガイドラインでは、身体活動の実施により、循環器病、2型糖尿病、がんが予防され、うつや不安の症状が軽減されるとともに、思考力、学習力、総合的な幸福感を高められるとされている。そして我が国でも、身体活動・運動の不足は、喫煙、高血圧に次ぐ3番目の死亡に対する危険因子だと示唆されており、このような背景を踏まえ、身体活動・運動の意義が国民に広く認知・実践されることを目的に本ガイドライン案は設定された。

最適な身体活動及び運動の強度や量には個人差があるため、本ガイドライン案は明確な基準を決定したものではない点には留意したい。一方で、成人・こども・高齢者の対象者別に、身体活動・運動の推奨事項が数値を示しつつまとめられた。成人ならば「1日約8000歩の歩行又はそれと同等以上の身体活動」、高齢者ならば「1日6000歩の歩行又はそれと同等以上の身体活動」が推奨されている。このような取組を進める上では、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意することが基本となる。

運動については、筋力トレーニングの有用性が報告された。これまでのガイドラインには筋トレに関する記述はなく、今回のガイドライン案で新たに推奨されることとなった項目である。本ガイドライン案では、マシンを用いたウエイトトレーニングだけでなく、自重で行う腕立て伏せ等も筋トレに含まれている。大きな筋群に負荷がかかるような筋トレを全身まんべんなく行うこと、少しずつ負荷を高めていくこと、筋肉は年齢に関係なく鍛えられることがポイントとして挙げられた。筋トレの実施回数については、研究で健康増進効果が見られたプログラムの内容や、実施時間が長くなりすぎると逆効果になる可能性を踏まえ、本ガイドライン案では週に2〜3日が推奨されている。

身体活動・運動に関する提言に加え、エネルギー・栄養素に関しても触れられている。健康の保持・増進のためには、身体活動量に応じて、エネルギー収支バランスを適切に保ち、必要な栄養素を過不足なく摂取することが基本である。その上で、肥満の場合は、身体活動による消費と食事で摂取するエネルギー量を調整することで、計画的に減量を図ることが必要であるとも述べられた。現在の体重・目標体重・減量期間を記入することで、1日に必要とされるエネルギーの減少量が計算できる図なども掲載され、一般向けに分かりやすい内容となっている。また、筋肉を増やしたり維持したりするためにはたんぱく質の摂取が重要であることも解説され、年齢別の推奨摂取量をまとめた表も掲載された。

今回策定されたガイドライン案は、令和5年時点の科学的知見に基づいて作成されたものであるため、現状で理解が不足している妊産婦や障害を有する人を対象とした身体活動・運動の推奨事項は示されていない。また、ガイドライン案が示された対象者についても、さらなる知見を蓄積して内容を見直していくことが求められるため、「健康日本21(第三次)」の中間評価、最終評価等を踏まえて、定期的に情報の追加を行うことが望ましいと結論付けられている。

執筆者:舟橋位於(ふなはし・いお)

1990年7月7日生まれ
東京大学理学部卒(学士・理学)
東京大学大学院総合文化研究科卒(修士・学術)
NSCA認定パーソナルトレーナー
調理師

東京大学在学中に石井直方教授(当時)の授業に感銘を受け、大学院は石井研究室で学ぶ。団体職員等を経て、現在は執筆業務および教育関連事業にて活動中。得意な執筆ジャンルは、運動・栄養・受験学習。

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