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「筋トレをすると身体が硬くなる」理由は筋肉ではなく脳からの指令伝達に原因?

「筋力トレーニングを行うと身体が硬くなる」このようなことを耳にしたことがないでしょうか? また、「広背筋が発達しすぎて気をつけができない」「大胸筋が邪魔でゴルフクラブを振ることに支障をきたす」など、まるで筋肉を大きくすることが、良くないことのように言われたりすることを耳にしたことはないでしょうか?
身体が硬くなるのは「筋トレ」で筋肉が肥大したことが原因ではなく、その他に主な原因があります。脳科学や神経生理学の発展により、どうやら筋トレを行い筋肉が肥大することで、筋肉自体が硬くなって身体の動きに支障をきたしているのではなく、不自然な動作を行うことで、筋肉をコントロールしている脳の働きに支障をきたしているということが分かってきました。
簡単に言うと、筋肉の問題でなく、脳の問題だと言うことになります。そのような点を踏まえながら以下に身体が硬くなる原因を一部挙げてみましょう。

なぜ筋トレを行うと身体が硬くなるのか?

①人間の脳は筋肉を収縮するように命令をすることが苦手で、動作単位で命令を行う

脳は「大腿四頭筋を収縮する」というように筋肉に対して命令を出すことができず、「膝を伸ばす」と言うように動作単位で命令を出します。したがって、特定の筋肉を意識するよう指令を出そうとすると神経混乱が起こり、結果、身体を硬くしてしまうと言われています。つまり「大腿四頭筋を意識して」というようにトレーニングを行うと、身体が硬くなる可能性があるということです。

②筋肉の収縮(発火)順序の間違った動作が脳にインプットされてしまう

しなやかな動きには決まった筋肉の収縮順序があります。簡単に言うと「中心(体幹)から末端(手足)に筋肉を連動していきます。対して筋力トレーニングはプリーチャーカールのような、座った状態でいきなり末端(上腕二頭筋)を動かすことがあり、その不自然な動きが脳にインプットされ、しなやかな動きができなくなることがあります。

③筋力トレーニングのほとんどの動きは1面性であるが、人間の動きは3面性で行われる

人間の動きは、通常3面性で行われます。3面性とは「矢状面、前額面、水平面」で、簡単に言うと「縦、横、高さ」です。筋力トレーニングは、例えば「ベンチプレスは水平面」「スクワットは矢状面」というように1面で行われることが多く、実際の動きとのギャップが生まれる結果、不自然な動きになってしまいます。
繰り返しになりますが、筋肉が硬くなるというのは、物質的に筋肉が硬まってしまうのではなく、不自然な動きを行うことで、脳に混乱を起こさせて筋肉に不必要な緊張を起こさせてしまうことが主な原因になると言われています。したがって「筋トレ」が原因でなく、偏った動きを行うことが身体が硬くなる原因と言っても良いと思います。そのような解決策として、エクササイズを行うときの注意点としては次のようなことがあります。

①筋肉を意識するのではなく、動作を意識する。
②体幹から力を出すようにしてエクササイズを行う。
③3面動作の種目を取り入れる。

前置きが長くなりましたが、今回はこの3つの要素を含んだ準備体操に効果的なエクササイズを紹介します。それがローリングパターン(寝返り)エクササイズです。このエクササイズを行うときは上記の注意点を考えながら、筋肉を意識しない、手足に力を入れないようにして行います。それでは解説していきましょう。

ローリングパターン

最初に両手両足を広げた状態で仰向けに寝ます(写真1)。足に力を入れない状態で寝返りする方向に身体を起こします(写真2)。このときほとんどのトレーニーは足に力が入ってしまいます。そのまま胸郭から骨盤、足の順に地面に接地していきます(写真3)。※この部分は意識しないで自然と行えるのが理想です。

完全にうつ伏せになったなら、そこから今度は身体を反らせるようにしながら(写真4)足の力は入れないで、元の位置に戻ります(写真5)。コアがしっかり機能しておらず体幹の連動ができない場合は、胸郭と骨盤が硬まった状態で、ぎこちないローリングになってしまいます(写真6)。
ほとんどのトレーニーは最初このエクササイズを上手く行うことができないのですが、心配無用、すぐにコツを掴んでできるようになるはずです。また、このエクササイズを正しく行うことでただ単にコアの強化になるだけでなく、しなやかな身体の連動を起こす動きが習得でき、そしてコアに自然と力が入り、手足がリラックスするのでスポーツの理想的な身体動作の状態を作ることができます。
このように身体を体幹の力で回旋できるのは私たち人類、哺乳類の特徴だと言えます。魚類のサメよりも哺乳類のイルカの方が泳ぐスピードが速くパフォーマンスが高いのは体幹が回旋(ローリング)するからです。これを専門的に「コイリングコア」と言います。もしあなたがスクワットやベンチプレスを行っていて身体が硬くなるような感じがした場合は、哺乳類としての動きを忘れてしまっているかもしれません。
準備運動でこのような動きを取り入れることで、少しでも身体は柔らかくしなやかになるのではないでしょうか?


著者プロフィール
井上大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/NSCACSCS/NPO法人JFTA理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF全日本ボディビルディング選手権6位。

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