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もう一つのキングオブエクササイズ「デッドリフト」の2通りの動作方法をマスターしよう

デッドリフトには大きく分けて2つの種類があります。プッシュ系のデッドリフトとプル系のデッドリフトです。プッシュ系のデッドリフトは身体を立て気味にして、スクワットのようなフォームで行います(写真1‒1)。

2種類のデッドリフトについて

 

プル系のデッドリフトは身体を前に倒した姿勢から、立ち上がります(写真2‒1)。プッシュ系のデッドリフトとスクワットの違いは、デッドリフトは握力が必要であるということと、肩甲骨のパッキング(固定力)が必要であるという点です。つまりデッドリフトの方が身体においてより機能的に使われる要素が大きいということです。
また、スクワットは立位の状態からしゃがむ際に殿筋、大腿四頭筋が一度引き伸ばされてから立ち上がるので、筋肉のストレッチ・ショートニング・サイクル(SSC)「※筋肉は一度引き伸ばされてから縮むことにより、ゴムのような弾性を利用できるという能力」が利用でき、比較的大きな力を発揮できます。簡単に言うと反動が使えるということです。
デッドリフトはスタート姿勢ですでに筋肉が伸ばされた状態なので立ち上がりの際にSSCを発揮することができないのが特徴です。この両者の“スポーツにおいての使い分け”を説明します。
スクワットは反動を用いたジャンプ(カウンタームーブメントジャンプ)に応用できるのに対し(例:垂直跳び、バレーボールのアタック)、デッドリフトは静止状態からのジャンプ(スタティックジャンプ)に応用できるのではないかということです(例:スプリントのスタート、水泳の飛び込み)。それではプッシュ系のデッドリフトについて解説していきます。

ベントニーデッドリフト

写真1‒1のように身体を立てた状態がスタート姿勢です。スクワットのボトムポジションに近いので、このエクササイズはスクワットと同様、デッドリフトに比べて大腿四頭筋の動員が多くなると言えます。また、脊柱に対しては長軸上の圧力がかかるので、脊柱への負担は大きくなります。
脊柱にかかる負担を軽くするには「腹腔内圧」を高めることです。そのために脊柱はニュートラル(曲がっても反ってもいない真っすぐな状態)に保つ必要があります。また、1レップずつバーベルを床に置いて、体幹への負荷を増減させることにより、腹圧の入るタイミングを速くすることが可能です。スポーツにおいて筋肉のリラックス状態から瞬時の収縮は「スターティングストレングス(力の立ち上がり)」とも呼ばれ、とても重要な要素となります。同様の効果がある種目としてヘキサゴンバーを使ったデッドリフト(写真1‒2)があります。この種目はバーベルをより身体の重心に近づけることが可能な種目になります。
この種目で得られる効果は以下のようになります。

➀大腿四頭筋の強化(従来のデッドリフトと比較した場合)
②スターティングストレングスの強化

次にプル系のデッドリフトについて解説していきます。

ルーマニアンデッドリフト

写真2‒1のように身体を前傾させた状態からのスタートになります。このエクササイズも身体を前傾させることにより、脊柱に剪断力がかかり脊柱に対する負担は大きくなるので、腹腔内圧をかけることを意識します。
この種目は、ベントニーデッドリフトに比べ、膝関節の可動域は少なくなるので、大腿四頭筋よりも殿筋、ハムストリングにかかる負荷が増大します。肩甲骨が外転の方向に引っ張られるので、正しい位置に固定する僧帽筋などの筋力も必要になります。また、身体が前傾しているので、脊柱起立筋や広背筋、僧帽筋など背面の筋肉がより多く動員され、背中の種目として取り入れられることもあります。
また、身体の前傾は殿筋、ハムストリングにストレッチがかかり、その可動域も増大するので、下半身の種目としても取り入れることが可能です。
知る人ぞ知るヘビーデューティートレーニングで有名なパーソナルトレーナーのマイク・メンツァー氏も「デッドリフトこそキング・オブ・エクササイズである」と言っているぐらい、多くの筋肉が動員される優れたエクササイズであると言えます。


下半身の後面の種目として取り入れる場合、膝を伸ばした状態で行う「スティッフレッグドデッドリフト(写真2‒2)」もハムストリングや大殿筋の発達に有効であると言えます。
この種目は女性のトレーニーが行なっているのを見かけますが、注意点は膝を反張させないという点です。膝を反張させることで、ハムストリングの張力が抜けてしまい、膝の障害の原因となりますので、特に身体が柔らかいトレーニーはより注意が必要になります。
以上、プッシュ系、およびプル系のデッドリフトについて解説しました。皆さんもぜひ、これを参考にして様々な種類のデッドリフトをプログラムの中で活用していただければと思います。


著者プロフィール
井上大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/NSCACSCS/NPO法人JFTA理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF全日本ボディビルディング選手権6位。

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