昨年のマッスルゲート東京で男子3カテゴリー全てに出場し、メンズフィジークとクラシックフィジークではオーバーオール優勝、ボディビルでクラス優勝を成し遂げ、大会の台風の目になった持田教利選手。YouTuber「おかずもち」としても活動する持田選手の高強度の脚トレへのこだわりを聞いた。
取材・文:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩
――今日はオフシーズンでの脚のトレーニングを拝見しました。脚のトレーニングを行うようになったのは、昨年からだと伺いました。
持田 そうです。下半身のトレーニングをやるようになってから、上半身の成長もよくなりました。1月から脚は週3回のルーティンにしました。それまではメンズフィジークにしか出ていなかったので、月に2回やるかやらないか、とった程度でした。やっていたのもスクワットとレッグエクステンションでした。
――最初に腹筋、カーフから入るのは?
持田 いろんな方から、腹直筋の溝が浅くて、カーフも弱いと言われたんです。昨年1月の時点ではカーフが全くない状態でした。
――全くない(笑)。
持田 サンプレイにトレーニングに行ったときに宮畑(豊)会長にカーフの弱さを指摘されて、そのことに気付いたんです。基本的にカーフと腹筋はアップとして毎回やるんだぞと言われ、それからトレーニングの前に必ずやるようになりました。確かに、トップ選手でカーフと腹筋が弱い選手っていないんです。
――言われてみれば、確かにそうですね。
持田 カーフを克服しないことには勝てない、と思ってやるようになりました。
――スタンディングカーフレイズでは少しヒザを緩めていました。
持田 ハムとお尻に収縮をかけた状態のまま、カーフに力を入れたんです。ボディビルのバックポーズのようなイメージです。立った状態でもカーフを出したいと思い、そのフォームでやっています。
――メインターゲットとしては、今日は「脚の前」ということになるのでしょうか。
持田 はい、今日は大腿四頭筋がメインで、ハムは2、3種目だけで終わりです。ハムとお尻がメインの日は6種目くらいやって、最後に四頭筋を2種目ほどやります。あともう一日、ハムと四頭筋を交互にスーパーセットで行う日もあります。
――脚のトレーニングは週に何回?
持田 3回です。トレーニングがうまく、すごい筋肉痛がきて週に何度も脚のトレーニングはできないという人もいると思うんです。僕は1日くらいで筋肉痛が治ってしまうので、これはもしかしたら回数を増やしても大丈夫なんじゃないかと思って試しにやってみたら、反応がよかったんです。僕の中では今のローテーションが合っているように思います。
――インナーサイ、次にレッグエクステンションという流れでした。
持田 骨盤底筋が弱くて、スクワットをやったときにお尻がぶれてしまうんです。だから、まずは骨盤底筋を温めたいのと、これは相澤隼人選手に言われたのですが、僕は内転筋のボリュームがないと。だから、ダブルバイのポーズを取ったときに脚の内側がスカスカに見えるんです。これでは、どんなに外側広筋が発達していても太く見えないと言われて。
――ステージに立ったときの、脚の間の隙間を埋められるように?
持田 そうです。その隙間の幅を研究して、そのために内転筋を強化して、外側もどのくらい張り出せば見栄えがいいかを考えてポージングを練習して、その繰り返しです。最短ルートで評価されるようになるには、そういった研究が必要だと思いました。
――コンテストでは、それほど大きくないのにステージ映えする選手もいれば、その逆の選手もいます。
持田 太い脚をしているのに、ステージに立ったときにあまり太く見えない選手もいます。それはなぜだろうと考えたら、そのままの状態で立っているんです。でも、少し外旋して脚を開いて、四頭筋と内転筋を見せれば太く見える。そういったテクニックに長けているのが横川(尚隆)選手です。僕は横川選手の規定ポーズを全て研究して、膝の位置やつま先の方向などを考えるようにしました。また、彼はインスタにトレーニング動画を少し上げてくれることもあるんです。そこで、そのトレーニングの狙いなども考えて、ほぼパクッています(苦笑)。
――大腿四頭筋の最初にレッグエクステンションを持ってくるのは?
持田 一番狙いたい筋肉に刺激をバンバン入れて、何をしても刺激が入ってしまうような状態に持っていきたいんです。事前疲労法のような感じで、先に対象筋に単関節の種目で温めてから入ることが多いです。足首にパッドをかませるのは、可動域が少し広くなるからです。
――次のハックスクワットはナロースタンスで、ドロップセットで追い込んでいました。
持田 レッグエクステンションとハックでほぼ出し切るようにして、そこから細かくやっていくイメージです。最初のほうの種目で脚全体のボリュームを作っちゃうイメージです。
――そして、その次がバーベルスクワットです。
持田 ここでは重量を持ちます。最近、起立筋や僧帽筋へ重量をかけることも大事だと思うようになったんです。起立筋と僧帽筋は男性ホルモンの受容体でもあるので、そこで重たいものを持つというだけで、前腕も鍛えられる。そこでポーズを取ったときの重量感を出せるんです。メンズフィジークとボディビルダーの身体って、何か違うんです。その違いは何かと考えたら、多関節種目を追求しているか、いないかだと思うんです。ボディビルでも勝つために、多関節種目をしっかりとやっていこうと思っています。なぜ僕の身体にはそうした重量感がないんだろうと思ったら、そういえば(多関節種目を)やってなかった。ジャパンカップで加藤(直之)選手、嶋田(慶太)選手の横に並ばせてもらったときに、厚みも質感も全然違いました。だから最近になってベンチプレス、スクワット、デッドリフトもやるようにしました。
――スクワットのあとにはシシースクワットです。
持田 そこまでの種目は浅い可動域でやっているんです。ポージングでは膝を深く曲げるような動作はないからです。立った状態での見栄えのいい脚を作るために、わざとパーシャルでやっています。そうした種目のあとにスミスマシンのフルレンジのスクワットにいくと、膝を痛めかねません。その前にシシースクワットで自体重でストレッチをかけるんです。完全に(対象筋を)使い切った状態で入った重いものを扱ったほうが(刺激の)入り方もいいので。
――そのあとにハムの補助種目に入ります。シーテッドのレッグカールを股関節屈曲と伸展の2種目行っていました。
持田 今日は収縮をメインにした種目で、あまり重量は扱わずにレップ数を多めにしました。最初のレッグカールは屈曲位でハムの付け根を、伸展位ではヒザ裏のほうを狙っています。ハムストリングに関してはポージングのためのトレーニングだと思っています。コントロールができない選手は、バックポーズでどんなに背中がよくても、ハムを出せない。これはもったいないことです。ハムの種目はやみくもにやるというより、感覚を掴みながら追い込むようにしています。ただ、これだけでは質感しか出せなくなるので、ボリュームを作るためにハムメインの日は高重量で追い込むようにしています。
――ハムの収縮は難しいです。
持田 そうなんです。STRIVEのマシンはすごくよくて、カムで終動負荷にできるんです。そこでいちばん力が入りやすいようにして、わざと収縮位から始めるようにしています。
――そのあとに、またエクステンションが入りますま。
持田 こっちのエクステンションは初動負荷にしてあるんです。思い切り振り上げて、ストレッチポジションで負荷が乗るようにしています。最初のエクステンションは、終動負荷でカットを出すようなイメージです。
――次のスミスマシンのブルガリアンは?
持田 今日は四頭筋の日なので、四頭筋の圧迫感を得た状態でのブルガリアンをやりたいんです。今日は膝を少し前に出したフォームになります。ハムとお尻の日はメイン種目にブルガリアンがくるんですが、そのときは四頭筋を温めずに、完全にお尻とハムを狙ったフォームでやります。
――最後の45度のエクステンションは?
持田 どんなにできても最後に収縮ができるということは、追い込みが足らないということです。最後に収縮感を出し切れるまでやります。
――とても練られた内容ですね。
持田 相澤選手や横川選手たちは、どうすればトップ選手に勝てるかを考えてポーズを組んでいると思うんです。
――それは現在の20代の選手たちの傾向ではあるのですか。
持田 研究して見せ方を極めようとする人、筋肉のボリュームを追い求める人に分かれてくると思います。僕は、その両方なんです。身体を大きくしたし、見栄えもきれいにしたい。日本ではまだフィットネスがそれほど浸透はしていません。僕を見て「かっこいいな」と思って、始める人が出てくればいいなと思っています。そのためには、僕がポーズが下手くそだたったら、「ボディビルって気持ち悪い」と思われてしまうかもしれない。だから、見せ方の研究だけは徹底してやっていきたいと思っています。
持田選手は将来、3つのカテゴリー全てで日本代表になって、すべてで世界選手権で優勝したいと語る。2021年の活躍から目が離せない。
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