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29歳の獣医が決意した女子フィジーク優勝「バセドウ病で苦しむ人の希望になれれば」

大久保智美選手718日に開催された「第36回東京クラス別選手権大会」の女子フィジーク158cm以下級に出場した大久保智美選手(29)が、初優勝を果たした。飽きっぽい性格という彼女は今年にかける思いが強く、不退転の覚悟で臨み、見事に頂点へ立った。その思いを聞くと、結果を出すことで同じ病気(バセドウ病)に苦しむ人に勇気を与えたかったと打ち明けた。

【写真】大久保選手の美しすぎるポージングと筋肉

「私って飽きっぽいんです。フルマラソンに挑戦しても、すぐにもういいやとなってしまうほど、熱しやすく冷めやすい性格なんです」

 女子フィジーク158cm以下級で優勝した大久保選手は、恥ずかしそうに語った。そんな彼女が唯一はまったのが、フィジークだという。

「私はYouTubeをやっていまして、2年くらい前に筋肉系YouTuberの山澤礼明さんのチャンネルを見て、フィジークという競技を知りました。それでフィジークの大会を見て、なぜか“日本一になれる”と根拠のない自信が出てきたんです」

 それから本格的にトレーニングを始めた彼女は、昨年、フィジークの大会に出場するもすべて予選敗退。いきなり決意して結果が出るほど甘い世界ではない。また飽きっぽい性格の悪い癖が出てしまったのか。いつもならば、このまま違うことに意識が向きそうなものだが、今回は違った。

「じつは卵巣嚢腫と診断されて、手術で除去したんです。あとで分かったことなんですが、良性でした。しかも手術日は、獣医の国家試験前日という最悪の巡り合わせ。幸いにも、手術は成功し、翌日の国家試験も無事に合格しました。でも、死と背中合わせになったことで、いつ死んでもおかしくないと思うようになりました。そして、その後にバセドウ病を患っていたことが分かりました」

 運命がアップダウンの繰り返し。バセドウ病は、自己免疫疾患のひとつで、完治できない病気ともいわれている。大久保選手は、そのことを知って決意した。

“私がフィジークで優勝することで、この病気で苦しむ人の希望になれれば”

 飽きっぽいとか言っていられない。パーソナルトレーナーを頼み、獣医の仕事をパート契約にしてもらうことで時間を作り、トレーニングにあてた。週3回のパーソナルトレーニングで肉体が変わり、自信もついてきた。そして、今大会の本番を迎えた。家族が見守る中、見事に優勝。鍛えられた肉体だけではなく、笑顔が輝いていた。

 今後の目標を聞くと「もちろん日本一です。日本一になって、バセドウ病で苦しむ人に夢を与えたいです」と強い口調ではっきりと答えた。

取材・文:松井孝夫 撮影:中島康介

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