10月6日、神戸芸術センターで行われた『ベストボディ・ジャパン2024ジャンル別・職業別西日本大会』パーソナルトレーナー&インストラクター部門でグランプリを受賞した荒川裕美子(あらかわ・ゆみこ/29)さん。
「クライアント様に、今までよりも大きな価値提供が行えるように」と、今シーズンからコンテストに出場している。話を聞くと、競技者とクライアント、常に2つの目線で取り組んでいる様子がうかがえる。
初出場はモデルジャパン2024千葉大会だった。
「『2、3週間調整すればいつでもコンテストに出られるような身体作りと健康習慣の両立』を目指し、自分なりの解釈で身体を作りました。ベストボディ・ジャパンが掲げる"健康美"に対するコンセプト理解は疎かなまま臨む形となり、結果はファイナリスト止まりでした」
2戦目の今大会に向けては、「ベストボディ・ジャパンが標榜する健康美」について分析し直すところから始めたという。
「カテゴリーにあった身体の仕上がりはもちろんのこと、コンセプトに沿った華やかなヘアメイク、美しい規定ポーズとウォーキングが魅せられる身体の機能や姿勢作りなど、ベストボディ・ジャパンが求める選手像と、トレーナーとしてのスキルアップ、自分なりの身体作り、という3つの目標を統合するような形で、コンテストに対する方向性を設定し直しました」
「結果、今回は運良くグランプリをいただくことができましたが、まだまだ改善点ばかりだ、と実感を伴った気づきを得ました。今はその気づきが何よりも財産です。この気づきから得たものをトレーナーとしてのスキルアップに生かし、また選手としてもステージに立てるように準備していきたいと思います」
トレーニングについては、「基本的に週4日、1時間半〜2時間半ほど」だという。
「自分自身の身体づくりのためのルーティンが3日、残りの1日はクライアント様のニーズに沿った種目の上達や、普段ルーティンに入っていない種目の練習、調整日として設けることが多いです」
「トレーニングを始めたばかりの数年前までは、週5日、2時間半以上というボリュームでした。でも、クライアントの皆様は、週1日〜週2日での身体作りを希望される方が多いので、その頻度で身体を作り変えるためには、なにが必要で効率的なのか考えるようになりました。種目もがむしゃらに数に頼るのではなく、自分の身体に合ったものを選ぶようにしています」
食事に関してもこだわりがあるという。
「食事に関して、よく『何を取ればいいですか?』とご質問をいただきますが、何を取るかよりも、まずは何を取らないかの方を大切にしています」
「自分の身体をひとつの容器だと考えます。入れられる量には限りがあるので、まず不要なものや不純なもの取り除くことで、空きができます。必要なものを取り入れるのは、そのスペースを作ってからだと考えています。あれもこれも取っていてはカロリー過多に陥り、身体を疲れさせます。身体に悪いものを取り除いてあげるだけでも心身が軽やかになり、エネルギーも持続しやすくなります」
「とはいえ、身体はとても複雑なので、頭では分かっていても食欲をコントロールし続けるのは難しいこともある」と荒川さんは言う。
「私の場合はレディースデーの直前期にチートデイを入れ、その期間は好きなものを満足する分だけ取って良いことにしています。そして脂肪に変わる前に効率よくエネルギー代謝を利用し、燃焼するため翌日以降のトレーニングは解糖系(糖を分解するような反応)をメインに、その後有酸素運動で調整し、元に戻しています。食事だけで身体を変えることも、トレーニングだけで身体を変えることも、難しいです。どちらかを頑張れないときは、どちらかを頑張って、バランスをとりやすくします」
「1日の食事内容やトレーニング、ストレッチ、ポージング練習などのルーティンを振り返ったときに、毎日100点を取り続けることは難しいです。オフの時期は60〜80点のラインを目指し、本番まで2カ月半を切ったタイミングから80〜100点、直前期は100〜120点を目指すというように、時期によって優先順位に緩急をつけ、日頃の習慣を自己採点するようにして過ごしました。短期戦ではなく長期戦と捉え、隙間時間を見つけては、やれることをこつこつこなしていたような感じです」
将来は、「予防医学とフィットネスを紐付けられるような活動が行えるようになれたら」と考えているそうだ。
「ボディメイクだけでなく、身体作りを通じて多くの方が健康に対する正しい知識を身につけ、健康であることの喜びを享受できるようなサポートができるようになりたいと考えています。そしてもっと先の目標であり、自分にとっても大きな課題となる部分ですが、食に対しもっと関心を持ち、地球や環境にやさしいエネルギーで生まれた食材を選び、いただくこと、その必要性についてもっと勉強し、その運動を後押しできるような活動が少しでもできるようになれたらと思っています」
取材:あまのともこ 撮影:岡 暁