マッスルゲートは、誰もが気軽に参加できることを目指すコンテストではあるが、審査や競技性に対する主催の意識は非常に高い。ボディメイク系競技につきまとうドーピングについて、実行委員会の荒川孝行氏はどのように考えているかをお聞きした。[初出:IRONMAN2024年12月号]
「高い競技性確保のため、ドーピングによる不公平感は根絶したい」
マッスルゲートは当初、ゴールドジムに通うお客様を中心として開催される気軽なジムコンテストでした。そのため、最初は明確なアンチドーピングの規定を設けてはいませんでした。
しかし、参加者が増え続けている状況を見て、大会を開催、運営するにあたってアンチドーピングに対する厳格な姿勢を取らないといけないと考えるようになりました。
そこで現在では、JBBFの定めるアンチドーピング規定を開催要項に記載し、それに従って出場するように参加者に促しています。また文面でアンチドーピングの方針を伝えるだけでなく、検査も始めました。
JBBFが行っている「薬物スクリーニング検査(JBBFでは現時点では『簡易ドーピング検査』と呼ばれている)」です。
- マッスルゲートが今年から導入した『薬物スクリーニング検査』の様子。
- 皮脂を採取して検査する
運用はJBBFと同じで、検査結果で違反者を出すことはないですが、結果の把握が抑止力となることを期待しています。検査はできるだけ多くの選手を対象に実施したいと考えており、来年からは開催される全てのコンテストで実施することを予定しています。
マッスルゲートは、誰でも気軽に出られることを目指している大会ですが、審査や競技性の面は決して疎かにしたくないと考えています。
マッスルゲートに出ながら、一歩一歩ステップアップすることに価値を感じるお客様もいらっしゃると思います。そのような選手の方の気持ちに応えるためにも、ドーピングによる不公平感がなくなるように運営していきたいと考えています。
アンチドーピングのための取り組みとしては、正しい教育も大切です。この点はJBBFとも相談し、検査をするならば絶対に教育とセットでなければならないということになりました。
ただ、マッスルゲートはあくまでもコンテストの場であり、選手登録や管理は行っていません。そのため、現段階では講習会等への参加を強制することはできず、個人での学習を促すにとどまっています。これに関しては、マッスルゲートのホームページで、参加者向けのドーピング講習動画を公開して、閲覧をお願いしている状況です。
今後もマッスルゲートが支持され続けるためには、やはり検査数を拡大していくことが大切だと思います。開催される全てのコンテストで、できるだけたくさんの方を対象とした検査を実施したいです。
また、ドーピング関係者を業界から排除する空気を作っていかないといけないとも思っています。例えば細かいことですが、ドーピングに関わった人物を、大会の審査員として運営などに関わらせないことです。
取材・文:舟橋位於 撮影:IRONMAN編集部 大会写真:北岡一浩
あらかわ・たかゆき
1978年3月15日生まれ。東京都出身。ゴールドジムアドバンストレーナー。パワーリフティング競技では国内外で活躍している。主な戦績は、全日本選手権93kg 級優勝6回(2007、2012~14、2017、2022)、世界選手権93kg級 7位(2017)など。