「フィットネスは生活の一部。競技に加熱しすぎて、この気持ちを忘れてしまっていました。
ボディコンテスト団体のサマー・スタイル・アワードで活躍する岩谷美保子(いわや・みほこ/32)さんが経験したのは、競技にのめり込むあまり、自分自身や家族との時間、そして心の健康が後回しになってしまうという状態だった。
「減量中は家族と同じ食事を楽しむことも少なくなり、外食も控えたりで。家族の中でも制限をかけてしまっている自分がいました」
また、自分の身体が理想と離れていると感じる期間が続くことで、精神的な負担になることも少なくなかったという。
「大会に向けて10kg近く体重を増減させる時期があり、その中で、自分が好きじゃない身体で過ごさなければいけない時期が苦痛でした。競技に必要な体型のためだと分かっていても、心から満足できない身体でいることが精神的なストレスにつながっていたんです」
そんな状況にあったが岩谷さんは、「悪循環から抜け出すには、競技との向き合い方を根本から見直す必要があった」と語った。
昨年2月のインタビュー時、分刻みで1日のスケジュールを決め、その通りに動かないと気が済まない『完璧主義』な性格だと話してくれた岩谷さん。子どもたちを寝かしつけてから夜12時にジムに行ったりと、「徹底的にやり切る」スタイルだったが、その生活を続けてきたことにより身体面や精神面での疲労が溜まっていってしまっていた。競技で勝つためには自分が心から好きと思えない体型になることに目をつぶってきたが、ついに隠し切れなくなっていた。
ただ、自分の状況を客観的に捉え、現状を変えようと動きだした岩谷さん。「1年中、自分自身の好きな体型で過ごす」ことや、「家族と一緒の食事を楽しむ」ことなどを意識するようになった。こうした取り組みを通じて、岩谷さんはこれまでの『完璧主義』から少しずつ抜け出し、「無理なく続けられる競技生活」を実現できるような状態になってきたという。
当時のことを、「競技に加熱しすぎるがあまり、『フィットネスは生活の一部で楽しいもの』だという感覚を忘れてしまっていた」と話す岩谷さん。競技者、特に若い競技者は、結果を追い求めすぎて心身の健康を害し、健康な状態であるべき本来のフィットネスから遠ざかってしまうこともある。
「ですが、その人たちに今から『肩の力を抜いて』と言っても伝わりにくいと思っていて。一回は結果を追い求めて無理をした経験がある人こそ、肩の力を抜いて楽しくフィットネスにか関わることの意味が分かる、という側面もあると思っています」
熱く燃え上がるように何かに打ち込んだ経験があるからこそ、新しい境地にいける。岩谷さんは2025年からこれまでのベティカテゴリーからビキニモデルへ挑戦するという。新たな気持ちで、新たなカテゴリーでどんなパフォーマンスを見せてくれるだろうか。
【SSAアンチドーピング活動】SUMMER STYLE AWARD(サマー・スタイル・アワード)はJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体である。全ての選手登録者はアンチドーピング講習の受講を必須としており、SSAから指名された場合はドーピング検査を受けなければならない。
取材:FITNESS LOVE編集部 撮影:夏目英明
-サマスタ選手, コンテスト
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