ストレッチを中心とした身体のセルフケアを学べるYouTubeチャンネル「前田のまいにちセルフケア by GronG」(登録者は28万人以上※2025年1月時点)を運営する前田修平さん(NASM-PES、はり師・きゅう師)が科学的な根拠をもとに、健康的な身体づくりのためのセルフケア方法をわかりやすく伝える本連載。第6回のテーマは「ストレッチ用ポールを活用したセルフケア」です。
【動画】ストレッチ用ポールの基本的な使い方|身体の変化を感じてみよう!
はじめに
あなたは無重力を体験したことはあるだろうか?もし宇宙飛行士の方なら話は別だが、なかなかレアケースであるはず。私たちは地球で生活する以上、重力と共に生きている。いつも重力に対して抗っていなければならないのだ。
運動習慣のある方でもない限りは、日常的に負担の大きい筋肉によって姿勢が乱れたり、肩こりや腰痛などの慢性的な不定愁訴に悩まされたりすることになるだろう。そんなときにおすすめなのがストレッチ用ポールだ。
特徴は2つある。
①円筒状のポールに仰向けに寝ることによって、重力からの物理的な負担を一時的に軽減できること。
②日常的に筋肉や関節にかかっている負荷の偏りを調節できること。シンプルで便利なツールだが、シンプルさゆえに正しく使うのは意外と難しい。
そこで、今回のコラムではセルフケアの際におこなうべき身体のチェックとストレッチ用ポールの具体的な使用方法について紹介する。
ストレッチ用ポールの効果的な使い方とは?
ストレッチ用ポールの用途は目的によって大きく3つに分かれる。
- リラックス 仰向けにポールに乗り、軽い動作をおこなう
- コンディショニング 筋肉に当て、セルフマッサージをおこなう
- トレーニング バランス感覚を養う補助ツールとして活用する
姿勢の調節と維持には主に上記のうち最初の2つ(リラックスとコンディショニング)の関わり合いが深い。
今回は【1.リラックス】に焦点を当ててみよう。当たり前すぎて恐縮だが、身体を変えたいならまずは自身の身体の状態を認知することと、次に改善のための対策を取ることがカギになる。
では具体的な使用方法について解説していこう。
ストレッチポールに乗る前に
0. 床に寝て背骨のカーブを確認する
背骨には本来、生理的弯曲と呼ばれる緩やかなカーブがある。身体にかかる衝撃を吸収したり、分散させるクッションのような働きをもっていたり、S字に弯曲していることで背骨全体がより柔軟に動き、運動をスムーズにしたり。頭や胸部、内臓、手足などの体重を効率よく支え、姿勢を保持したりとさまざまな役割がある。
あるべきカーブが失われている場合や、過度な弯曲になっているときは上述したような背骨本来の機能が失われ、身体の関節や各器官にかかる負担も多くなるというわけだ。
【チェックポイントは3つ】
- 背骨のカーブ(後頭部・肩甲骨・骨盤・踵の4点が無理なく床についているか)
- 身体の左右非対称性(骨盤や肩の高さに左右の違いはないか)
- 負担のかかっている部位(過度に腰が反る・あごが上がる・膝が浮いているなどの所見はないか)
反り腰や猫背など、姿勢の悩みを抱えている人は、どこかに偏りが出たり違和感が出る場合が多い。重力のストレスが少ない寝た姿勢でそれらが感じ取れるということは、座ったり立つときには重力が加わって、負担が助長されることは容易に想像できるはずだ。まずはアンバランスな状態の筋肉にアプローチしよう。
ストレッチポールの基本的な使い方(リラックス編)
1. 仰向けに寝る
ポールに背骨を沿わせるようにようにして、仰向けに寝よう。後頭部の中央、肩甲骨の間、骨盤の中央をポールにしっかりと乗せ、足を腰幅から肩幅程度に開き、両手を身体の横で軽く開いておく。あごを引き、無理なく大きな呼吸ができる安定したポジションを探そう。
2. バランスを取りながら軽い動作を行う (7種目)
ポールの上に仰向けになった状態で、手足をゆっくりと動かしながら筋肉の緊張をほぐしていく。
①床みがき
ポイント:手のひらを上にして、床の上で小さくゆっくり円を描く。500円玉くらいの大きさをイメージ。
②前へならえ
ポイント:両腕を天井方向に伸ばし、腕、肩の力を抜いて、腕を伸ばしたまま小さく上下させる。
③羽ばたき
ポイント:肩に力が入らないよう両腕を外側に広げる。肘が床から浮かない程度に。
④ワイパー
ポイント:両膝を伸ばし、踵を支点につま先をゆっくり小さく左右に動かす。
⑤ワーム
ポイント:両足を伸ばし、踵の位置を固定して、膝だけを小さく上下させる。
⑥斜め伸ばし
ポイント:片手片足を対角線上に伸ばす。股関節、肩関節の力を抜いて、深い呼吸を繰り返す。
⑦背中ほぐし
ポイント:ポールの上で身体を左右に小さく揺らしてほぐす。脱力して、頭が最後に揺れるように。
最も大切!ストレッチ用ポール使用前後の身体チェック
【チェックポイントは3つ】
- 背骨のカーブ(後頭部・肩甲骨・骨盤・踵の4点が無理なく床についているか)
- 身体の左右非対称性(つま先の開き具合・骨盤の高さ・肩の高さの違い)
- 負担のかかっている部位(過度に腰が反る・あごが上がる・膝が浮いているなどの所見はないか)
ポールに乗る前にチェックしたこれらのポイントを覚えているだろうか?実際にポールに乗った後に身体がどのように変化したのかをくまなく観察しよう。
使用経験が少ない方や身体の偏りが大きい人ほど、身体が“フラット”になっている感覚を得やすいはずだ。私自身も実際にクライアント指導をしていて、「え?こんなに床に吸い付く感覚があるの?」という声をいただくことがある。それは驚くことでもなんでもなく、本来のあなたの身体はその状態であるはずなのだ。
毎日、少しずつ繰り返すことでこのビフォーアフターの差を小さくできれば、あなたの身体が良い状態に近づいているバロメーターになる。ポールに乗った後の心地よさが徐々に少なくなることは、よい兆候であると伝えておきたい。
まとめ
繰り返す毎日の中で、知らず知らずのうちに身体が受けている負担は、何かのきっかけがないと気づかないことが多い。いや、本当は気づいているけれど見て見ぬふりをしたり、後回しにしていることだってあるはずだ。
現実を突きつけられることは時につらいことでもあるけれど、もっと早く知りたかったと感じることもあるし、新たな自分へ向かうはじまりの一歩でもある。
ストレッチ用ポールは、日々頑張るあなたの基礎をサポートするのに有用なツールだとおすすめできる。今回のコラムを何かのきっかけにしてもらえれば、この上ない喜びだ。
著者:前田 修平(まえだ・しゅうへい)
NASM-PES、はり師・きゅう師。ストレッチを中心とした身体のセルフケアを学べるYouTubeチャンネル『前田のまいにちセルフケア by GronG』を運営。登録者は28万人以上(※2025年1月時点)。科学的な根拠をもとに、健康的な身体づくりのためのセルフケア方法をわかりやすく伝えている。
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