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【貴重インタビュー】沢村忠が11年前に語ってくれた子供たちへの熱き想い

引退後は子供たちに再びキックボクシング指導を行った

引退とはその世界との決別――とキックから完全に離れたが、同時に世の若者たちを見て思うところもあった。
「今は若い子がコンビニの前で座り込んでものを食べたり、高校生が平気な顔でタバコを吸っていたりする。“個性・個人の尊重”だとも言うけど、人は社会の中で生きていて、社会には基本的な決まりやルールがある。それは守らなきゃいけない訳です。でも、今は親もそうやって育てられてないから、分からないし言う人もいない。でも“三つ子の魂百まで”じゃないけど、10歳ぐらいまでに身に付いたことというのは大きくなっても忘れない。だから小さいころからやっておかないとダメです。僕自身、5歳から空手をやってグレずに来ることができました」

練習前と練習後、そして指導の中で沢村さんは技術だけでなく様々なことを子どもたちに語りかける。
「いきなり『一人で生きてるんじゃないんだぞ』とか言っても分かりませんから、『お母さんを大事にしろよ』とか『友だちに優しくしろよ』とか、そういう基本的なことを言ってます。そういったことから、自然に礼節だったり思いやりが身についていくと思うんです。

人間一人では生きていけない、一人じゃダメなんだよっていうことですけど、まずは気配り・思いやり。これは子どもだけじゃなく武道の精神でもあるんです。気遣い・気配り・思いやり――この3点セットは武道の基本です。たとえば街を歩いていても、いつも安全な道じゃなく自転車が来たり何が来るか分からない訳ですから、そういう気配り。それが人に対しては思いやり、気遣いですよね。

だから武道に限らず、気配り・思いやりというのは全てにおいて大事なことです。これはサラリーマンであろうが店主であろうが、武道に限らずスポーツに限らず、人として大事なことです。それさえあればみんな和やかに、笑顔で会うことができるじゃないですか。それを子どもたちに覚えてほしい」

沢村さんがスーパースターであったことを指導を受ける子どもたちは知らないが、宮坂代表は「やっぱり一時代を築いた方だからいるだけでオーラが違うし、子どもたちも感じるものがあるんじゃないですか」と言い、元気盛りの子どもたちが揃っていながら騒いだり走り回ったりする子がなく、まとまりがよいのが印象的だった。

国民的人気を誇った昭和のスーパーヒーロー・沢村忠

「一生懸命にやればカッコよくなって上手くなるから」――そんな風に話して練習を始めた沢村さんだが、「強くなれば人は優しくなります。強い人は優しい。じゃあ強くなるにはどうすればいいかと言ったら上手くなればいい。上手くなれば強くなるし、カッコよくなる。全部が繋がっているんです」とその意図を練習後に教えてくれた。

強い人は優しいし、強い人はカッコいい。
往時の活躍は知らない世代だが、誰より自身の言葉を沢村さん本人が感じさせてくれた取材だった。

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