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皇治という生き方。「悪役か主役か」[ロングインタビュー全文掲載③]

9月27日(日)、さいたまスーパーアリーナで開催された『RIZIN.24』のメインカードとして、RISE世界フェザー級王者“神童”那須川天心(TARGET/Cygames)に挑んだ皇治(TEAM ONE)。久しぶりの地上波(フジテレビ系)での放送ということもあり、この二人の激闘を目にしたファンも多いのではないだろうか。一つひとつの言動や行動に賛否両論が起き話題を呼ぶ男、皇治が語る「格闘技が盛り上がれば悪役でも主役でも何でもいいですよ」という生き方を、試合前のインタビューから振り返ってみる。※[ロングインタビュー全文掲載①②]を読んでいない方はそちらからご覧ください。

K-1との契約を破棄してRIZIN参戦を発表すると、8月9日の『RIZIN.22』ではさっそく那須川天心を挑発。不敵な笑みに野心家と策略家、二つの顔がのぞく。賛否両論を巻き起こしながら突き進む男の生き方とは?
取材・文_藤村幸代 撮影_ AP,inc.
取材協力_ LIBERTAD 東京都世田谷区駒沢2-17-5 廣達ビルB ☎ 03-6453-4333

──ぜひ聞かせてください。
皇治 世のなかにはいるんですよ、那須川天心みたいな天才で、ずっと勝っていくという人間が。それもほんまにカッコええと思うけど、どっちかっていったら、俺みたいに才能がなくてなかなか出たいけど出られないという人のほうが、世の中には多いんちゃうかな。そういう子たちに、俺は背中を見せていきたいんですよ。天心や武尊、世界的アスリートでいえばメッシとか、ああいう人らも絶対に努力はしてるけど、元々がああいう星に生まれてるっていうのもある。俺たちっていうのはそうじゃなくて、才能もないし何もないけど、必死に頑張ったらその位置に行ったり、そいつらを超えられたりできる。それを見てもらいたいし、だからそういう反骨精神だけは絶対に負けないですね。
──ここまで自分が有言実行できてきたのはなぜだと思いますか。
皇治 自分で言うのはアレやけど、練習は誰よりもしましたよ。三部練なんて当たり前ですし。K‒1の「ONE DAY」という動画ではシャンパン飲んだりしてますけど、あれはジンジャーエールに変えてもらっていて、酒も飲まんとずっと練習してましたしね。だから誰よりも練習していた自信はありました。そして、誰よりも考えた。
──考えた?
皇治 そう、ムチャクチャ考えた。今もそうですけど、自分がどうやったら言ったことを実現するまで持っていけるか。俺、格闘技は盛り上げたもん勝ちやと思ってるんで。はっきり言って俺より強いヤツを探したら何万といる。でも、そいつは出てこれないんですよ。だったら、出てきている俺らがすることは盛り上げることなんです。そのために人より何倍も、何倍も考えました。
──アンチの中には「大口は強い選手とやって勝ってから叩け」という声もありますね。
皇治 言うたら卜部の兄ちゃんも世界チャンピオンだったし、Krushのチャンピオンだった島野浩太朗にも勝ってるしね。まあ、ちっちゃいところで言ったらなんぼでもあるんですよ。じゃあ、誰が強いのって話で、今で言ったら天心しかいない。だから俺は天心にしか興味がない。だって、俺が白鳥(大珠)くんと試合して誰が盛り上がるの? それは白鳥ファンだけなんです。俺のファンなんて誰も盛り上がらないし。
──白鳥選手は皇治選手に対して「リスペクト」との言葉で対戦相手に名乗りをあげていました。
皇治 だから、自分は白鳥くんに対して何も悪口言う気はない。ただ、そこで年齢の話になるんだけど。俺が24歳だったら全然やったと思うんですね。でも今は31歳で、命を懸けられるのは残り数戦だと思うから、意味あることをしたいですし、より格闘技界が盛り上がるには俺が上のヤツを食うしかないと思ってる。だから天心とか(フロイド・)メイウェザー、(コナー・)マクレガーとやりたいなと思っているので。
──かなりハードルの高い有言実行になりそうですね。
皇治 でも、俺がやられる姿とか、もうそういう域は超えたと俺は思ってる。もちろんファイターなんで勝つに越したことはないですけど、勝ち負けよりいろんな姿を見せたいというか。さっきも言ってくれはったけど、K‒1でいい立場ができて、金も稼げるようになって、のほほんとしてりゃ女にモテますし。その立場を捨ててでも、31になった自分が挑戦することにすげー意味があるんじゃないかなって。白鳥選手とか若手の選手とやるよりは、世の中に知られる選手に向かっていく姿を見せたいなっていう。だから、武尊戦もあれだけ熱を生んだと思うんで。
──武尊vs天心を実現させたい気持ちと、自分がRIZINで活躍したい気持ちは半々ぐらいですか。
皇治 ファイターとしてはもちろん上のヤツを食っていくことは当たり前ですし、それこそ俺がファンに見せられる姿やと思うんです。けど、知名度のあるファイターとして今は戦わせてもらってるので、何か格闘技界に貢献せなアカンと思っている。だって、生まれつき知名度があったわけじゃなく、格闘技界に救ってもらって、格闘技ファンに応援してもらって今があるので、その俺が今できることと言ったら、武尊vs天心の実現だと思うし、それがみんなの望んでいることだと思う。実際、今は何も動いていない状況だと思うので、俺の行動で何かが変わればいいなって思って動いています。
──RIZINでの野望は2つある。
皇治 その通りです。みんなの見たいカードが今は武尊と天心やと思うから〝己が動くことによって実現する〟ということを、自分が動くことで示すことができたかなと。この件について、あとは2人の問題やと思う。俺自身としては、自分がやることはRIZINに行くことであって、俺が武尊と天心に言いたかったのは「自分らが動くしかないんだ」ということなんです。
──「俺は行動したぞ、お前らはどうなんだ」と。移籍会見後には武尊選手の反発など本当に賛否両論でしたが。
皇治 俺は何を言われるのが嫌とか、それで発言をしないとか発言を変えるっていうのはないです。何を言われても正解です。一番不正解なのは何も触れられないこと、話題にもならないことです。今回、俺が行動したことで格闘技界がムッチャ動いたと自分では思ってるんで、結果としては何を言われても正解です。その代わり、捨ててきたものも多かったですけどね。ホンマに泣いて泣いて、どれだけ苦しんだかというくらい泣きました、今回は。


──捨てるのが一番つらかったものはなんですか。
皇治 やっぱり練習場所であるシルバーウルフと、トレーナーである大宮司(進)さんと別れるのが一番悲しかった。K‒1での立場を捨てる恐怖なんて全然なかったですけど、練習場所と信頼できて自分を強くしてくれたトレーナーがいなくなる怖さはありました。でも、今練習させてもらっているのが左右田(泰臣)さんの駒沢にあるLIBERTAD(東京都世田谷区駒沢2‒17‒5 廣達ビルB)というジムで、左右田さんは大宮司さんの一番弟子なんで、それは本当に心強いですね。まあ、全部失ってでも行くと決めたのは自分やし、何かを得る時は絶対に何かを捨てないとアカン。それが俺の座右の銘で、それが社会の厳しさやと思うんで。
──大切なものを捨てるほどの価値がありますか、皇治選手にとってのRIZIN参戦は。
皇治 価値があると信じているし、そういう試合をしていかないと。「はい、RIZIN来ました、意味分からんヤツと試合しました」では何のこっちゃ分からんので。RIZINて伝説ですよね、日本でメイウェザーに試合をさせているという意味では。そこで自分がどんな伝説を作れるか。まあ、楽しみにしててください。あと、俺が一番言いたいのはRIZINもK‒1も仲ようせえよと。特にコロナで世間がショボついている今だからこそ、余計にみんなで盛り上げようと。全選手に嫌われようが悪役やろうがRIZIN、格闘技界が盛り上がるなら何でもええ。ホンマ、それだけです。

KOJI
1989年5月6日、大阪府池田市出身
身長173㎝
ISKA世界ライト級王者
初代HEATキックルールライト級王者
42戦28勝(10KO)14敗
TEAM ONE所属


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