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スクワットをやるなら腹筋は鍛えなくていいのか!?度々論争が起きるこの問題に専門家が答える

突然ですが、「スクワットで腹筋は鍛えられる」ということは聞いたことがありますか?結論から言うと、正しくもあり、その逆でもあるということが言えます。まずこれは、人それぞれで異なることなので鵜吞みにしてはいけません。では、そのスクワットで腹筋が鍛えられるとはどういうことなのでしょうか。そして、専門家が導きだした答えとは!?

文・撮影:井上大輔(NPO法人日本ファンクショナルトレーニング協会)

天然のコルセットを作ろう

エクササイズ中の腰痛を予防するには大きく2つの方法があります。ひとつは「リフティングベルト」を使うことです。リフティングベルトを使うことで、腰を外部から保護する効果があります。特にスクワットなど、脚のトレーニングの際には、腰椎に軸圧や剪断力がかかるので、高重量をより安全に行うためには、リフティングベルトが必要不可欠になります。
しかし問題がひとつあります。それはトレーニングの際には常にリフティングベルトを手放せないという「依存性」が出てくることです。そうなると、特に腰痛がある方、スポーツを行なっている方は、トレーニング以外の場面で、自身の体幹の筋力で腰椎を維持できなくなる可能性があります。一番避けたいのは、体幹が弱い状態で、腕脚の筋力が強くなることです。その場合、体幹が腕脚の強い出力に耐えられず、支えきれなくなって腰を痛めてしまうリスクが高くなります。
したがって、リフティングベルトを着用するのは、自身の体幹の筋力以上の負荷をかけるときに留め(5RM以上)、あとはベルトを外し、自身の体幹の筋力を用いエクササイズを行うのが良いと言われています。そして、もうひとつの腰痛予防は、体幹を別に鍛えることです。体幹の深部には「腹横筋」と呼ばれる天然のコルセットの役割をする筋肉が存在するので、それを活性化させて使えるようにする方法です。つまり人間には自身の身体の中に「リフティングベルト」が備わっているということです。そしてこのベルトが使えていない人が多いので、使えるようにしましょうという考えです。

スクワットを行えば体幹トレーニングは必要ない?

よく言われるのは、スクワットを行えば必然的に腹横筋をはじめ、体幹が鍛えられるので、別途、体幹トレーニングは必要ないという意見です。このような意見は比較的、身体が発達している人やボディメイク競技で結果を出している人が言うことが多いので、非常に説得力があります。
しかし、ここで考えないといけないのは、自分自身もその人に当てはまるかということです。特に身体が発達している人は、もともと生まれつき身体ががっしりしており、腰も頑丈な人が多い傾向にあります。身体軸もしっかりしているので、こういう人はスクワットを行うことで、体幹を上手く使うことができ、体幹を鍛えることが可能です。
しかし、このような才能のある人の言うことを、十分な才能を持ち合わせていない人が行うと、同じように上手くいかないことが多々あり、逆にケガのリスクが高くなることも考えられるので注意が必要です。

スクワットで正しく体幹が使われているか知る方法

写真1-1 バーベルスクワットを現在使用している重量で行う

スクワットの際に、しっかりと体幹が働き身体を支えられているか確認する方法があります。

写真1-2 スクワット前のストレッチ

写真1-3 スクワット後に硬くなっている場合や違和感が出た場合は体幹をうまく使えていないか、重量が重すぎることを疑おう

それはバーべルスクワット(写真1―1)を行う前と後に(写真1―2、写真1―3)のストレッチを行なってみて、硬くなっているか、やわらかくなっているか確認する方法です。もし、腰に許容範囲以上の負荷がかかる、もしくは体幹の機能が正しく使われていない状態(腹圧がかからない状態)で行なったならエクササイズ前(写真1―2)よりエクササイズ後(写真1―3)の方が、身体が硬くなる傾向にあります。逆に体幹が上手く使えた状態で、同じストレッチを行うと身体がやわらかくなるか、エクササイズ前と同じになります。
もしあなたがスクワット後のストレッチで身体の柔軟性が低下してしまった場合は、その重量に対して体幹が耐えられていない可能性があります。そのようなトレーニーは、そのままスクワットの重量を上げていくと、腰を痛める危険性が高くなります。これに当てはまるようなトレーニーは、スクワットだけではなく、別途、体幹トレーニングを取り入れることを考えてみても良いと思います。

動きの準備としてのプランク

話がそれましたが、改めて今回は、主にスクワットをすればする程、腰が硬くなってしまう人を対象にその準備運動を紹介したいと思います。この準備運動のことを私は「ムーブメントプレパレーション(動きの準備)」と呼んでいます。正しく体幹を使えるようにするための準備運動です。
その中で最も有名なのは「プランク」です。この種目はスポーツ選手のトレーニング現場でよく見られますが、その効果は賛否両論です。つまりこの種目も行い方が悪いと身体は逆に硬くなり、正しく行えれば身体に良い影響をもたらします。もうひとつ、この種目で誤解を得やすいのは、この種目をメイン種目として行うと効果を感じ取ることが難しいことです。通常ではこれらのトレーニングはあくまで、メインのトレーニングの補助種目、またはムーブメントプレパレーションとして本番の種目でケガをしないことを目的に行います。それではプランクの正しい行い方を解説します。目的は自身の体幹に天然のコルセットを手に入れることです。

プランクの行い方

写真2-1 背中と棒の隙間をなくすように行う

伏臥位(うつ伏せ)の状態で、両肘をたて身体の姿勢を保持します。このとき棒などを当てた際に、背中と棒の隙間をなくすようにします(写真2―1)。その状態を維持できたなら、次に息を吐きながらお腹を凹ましていきます(写真2―2)。お腹を凹ますことを「ドローイン」と言いますが、ドローインの状態でプランクの姿勢を維持します。

写真2-2 お腹を凹ました(ドローイン)状態でのプランク

最後に、今度は息を吸いながらお腹をできるだけ膨らました状態でプランクを行います。このときお腹が太い状態を維持するように意識します。(写真2―3)その他、プランクはいろいろなバリエーションがありますが、このように体幹がどのような状態でも、ニュートラルな体幹を維持できることが重要です。

写真2-3 写真2ー3
お腹を膨らました状態でのプランク

これまでプランクの説明を行いましたが、この種目は絶対に取り入れた方が良いかと言えば、それはその人によって違ってきます。大切なのはこの種目を正しく行うことです。そうすることにより身体に良い影響を与えるならば、行なったほうが良いと思いますし、そうでないならプログラムから外しても良いと思います。トレーニングの本質は「やってみないと分からない」ので、まずは「正しいフォーム」で試してみることからはじめてみてはいかがでしょうか?


〈著者プロフィール〉
井上大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師。整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)NSCACSCS、NPO法人JFTA理事長。17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。2006年NBBF全日本選手権第6位。

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