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軽い重量を素早い動作で繰り返す筋トレが筋肥大にも有効的「スピードトレーニングに挑戦する」

スピードトレーニングの注意点

瞬発力を使った動作は、当然、動作スピードが速い。軽いウエイトであっても、それを素早く押し上げようとすれば関節や腱、靱帯などに負担がかかる。その点をあらかじめ理解した上で、限りなく正確なフォームを維持するようにしたい。また、当然のことながらスピードトレーニングは初級者には向いていない。

さらに、動作が速くなると、動きが雑になったり反動を使いやすくなる。反動によって瞬発的な動きをするのではない。どれだけ素早い動作であっても、コントロールされた動きで行うというのが原則である。

スピードトレーニングでケガをするとしたら、動作のコントロールができなくなったり、反動に頼ってしまったりしたときだ。そしてそれは、関節がロックアウトされてしまったときに起きやすい。例えばベンチプレスでスピードトレーニングを行う場合は以下の点に注意してほしい。

まずはベンチプレスのトップからボトムまでは通常のスピードで下ろす。そして、ボトムからトップまでの挙上動作はできるだけ瞬発的な力で押し上げる。

ただし、スピードをコントロールせずに勢いでウエイトを押し上げようとすると、トップで肘関節が大きな力を発揮したままロックされてしまい、肘関節を痛める原因になる。さらに、勢いをコントロールできなくなると、バーを空中に放り上げてしまうことも考えられ、落ちてきたバーに自身が潰される惨劇も起きかねない。

スピードトレーニングとは、がむしゃらに速いテンポで行えばいいというものではない。瞬発的に挙上するが、それは決して反動や勢いに頼ったものではなく、しっかり動作をコントロールする必要性があるということを忘れないでほしい。

バンドを活用する

世界中のパワーリフターたちが聖地として憧れる「ウエストサイドバーベル」は、ルイ・シモンズが作り上げたパワーリフターのためのトレーニング施設だ。

ルイ・シモンズ自身も世界的に有名なパワーリフターだが、彼はこれまでに多くのパワーリフターを指導し、多くのチャンピオンを育ててきた。

そんなルイ・シモンズがリフターたちのトレーニングに取り入れていたのが「ダイナミック・エフォート・ワーク」である。しかも、これを実践するときは、リフターたちに1日中続けるように指示したのである。

なぜ1日中なのか。それは、シモンズが指導したダイナミック・エフォート・ワークでは、関節がロックされる直前にスピードを抑えるやり方が求められていたからだ。一度覚えてしまえば意識しなくてもできるようになるが、そのレベルに達するには相当量の練習が必要なのだ。

どのようにしてスピードを抑えるのか。それは、関節がロックされる直前に、素早く動かす方向とは逆方向に動作するのだ。ベンチプレスで例えるなら、ボトムからトップへと瞬発的にウエイトを押し上げるのだが、トップポジションに到達する直前でウエイトを下ろす動きをするのだ。

ウェストサイドバーベルでは、このやり方をマスターするためにバンドを活用している。選択した種目のトップポジションでバンドが最大限に引き伸ばされるようにセットすると、トップポジションに近づけば近づくほどバンドの張力によって引き戻される力が強く働く。これを利用すれば、トップポジションの直前でウエイトを押し上げるスピードを抑制することができるのだ。

もちろん、バンドの張力に任せっきりにすればウエイトに押し潰されてしまうので、張力と重力に抵抗しながら下ろす動作を行うことになる。

特殊なスピードトレーニング

瞬発力を使ったトレーニングで、ウエイトの挙上に失敗してしまい押し潰されるトレーニーの動画がYouTubeなどにアップされている。見たことがあるという人もいるだろう。

例えばベンチプレスで、瞬発的にボトムからトップにウエイトを押し上げる際に、スピードに乗せてバーを持ち上げ、その勢いでウエイトを宙に浮かせてキャッチするというやり方がある。ベンチプレス・スローと呼ばれるこの種目は、瞬発力を最大限に発揮してウエイトを押し上げ、トップで手から離れたウエイトを受け止めて握り直し、ボトムに下ろす動作を繰り返すものだ。

しかし、この種目を行うのであれば必ずスミスマシンを使うようにしたい。スミスマシンなら、ウエイトを放り上げて、もし受け損ねても、ストッパーを適切にセットしていればバーに押し潰されなくて済むはずだ。また、この種目を行うなら、重量はできるだけ軽いものを選択するようにしたい。

実際、スミスマシン・ベンチプレス・スローなら、トップで動作のスピードを無理に押し殺す必要はなくなる。また、いったん手から離れたウエイトを受け止めて握り直すとき、大きな衝撃が筋肉や腱にかかり、それが発達反応を引き起こす傷を作る。つまり、このときの衝撃は筋肉や腱をさらに強化してくれるわけだ。

ただし、この種のトレーニング法は上級者用であることを忘れないように。初級者や中級者が手を出すべきではない。

スピードトレーニングを行える種目

スピードトレーニングを行う際に、採用していい種目を参考までに紹介しておきたい。筋発達はもちろん体脂肪の燃焼を促し、身体能力を総合的に向上させてくれるので、スピードトレーニングに興味がある人は以下の種目で試してみよう。

下半身の種目

●スクワット
●スクワットジャンプ(ボックスジャンプ)
●ケトルベルスウィング
●ライイング・レッグカール
●スレッドワーク(重りを乗せたそりを引っ張る運動
※スレッドワークは、厳密には瞬発的な力を発揮する動作ではないが、できるだけ素早く行うようにすることでコンディションづくりに役立つ。

上半身の種目

●バーベルベンチプレス(インクライン、フラット、ディクラインのいずれでも可)
●ハンマーマシン・チェスト&ショルダープレス
●バーベル・オーバーヘッド・プッシュプレス
●スミスマシン・ベンチプレス・スロー(上級者のみに推奨。スミスマシンとベンチ台を組み合わせ、バーベルをトップポジションの直前で数センチほど放り上げ、再び握ってボトムまで下ろす動作)
●エクスプローシブ・プッシュアップ(腕立て伏せで、ボトムからトップに瞬発的に身体を押し上げて、両手のひらが瞬間的に床から浮くようにする。余裕があれば、手が床から浮いた瞬間に両手で拍手するクラッピング・プッシュアップを行ってもいい)
●バリスティック・インクラインクランチ(上体を起こすときにパートナーにボールを投げ、トップで投げ返されたボールを受け取ってスタートポジションに戻る。身体を戻すネガティブレップで、自重に加えてボールが負荷になるので強度が高まる)

全身種目

●デッドリフト
●パワークリーン

追記事項

●カーフ種目は可動域が短いので、ここではスピードトレーニングの対象部位から外した。
●上腕二頭筋や上腕三頭筋は、前述した上半身の種目で十分に強い刺激を受けるので、スピードトレーニングの対象部位から外した。
●上腕二頭筋や上腕三頭筋は小筋群であり、バイセップスカールやトライセップスエクステンションなどのアイソレーション系種目でスピードトレーニングを行うことはケガのリスクを高めることになる。

胸・肩のスピードトレーニング例

スピードトレーニングの具体的な取り入れ方を紹介しておくので、興味がある人は参考にしてほしい。スピードトレーニングは、ワークアウトする部位の最初の種目で行い、それ以外の種目は通常のトレーニングのやり方で行う。
①瞬発力を使ったバーベルベンチプレス(胸の第1種目)
2~5レップ×2、3セット
※1RM×50%の重量を使う。
②ハンマー・インクラインプレス
8~10レップ×3セット
③ディップス
限界レップ×3セット
※②と③はスーパーセットで行う。
④シーテッド・ケーブルプレス
12~15レップ×2セット
※ややディクラインの角度で行う。
⑤ケーブルクロスオーバー(またはペックフライ)
ハイレップ×1セット
※ドロップセット法やレスト&ポーズ法の高強度テクニックを使い、限界までしっかり追い込む。
⑥瞬発力を使ったスタンディング・バーベル・プッシュプレス(肩の第1種目)
2~5レップ×2、3セット
※1RM×50%の重量を使う。
⑦ケーブルサイドレイズ
10レップ×3セット
⑧ベントオーバー・サイドレイズ(またはリアデルトマシン)
12レップ×3セット
⑨ワイドグリップ・スミスマシン・アップライトロウ
10レップ×2、3セット
⑩ビハインドバック・スミスマシンシュラッグ
15レップ×2、3セット
※⑨と⑩はスーパーセットで行う。

まとめ

瞬発力を使ったスピードトレーニングというと、オリンピックリフターのために特化されたトレーニング法だと思っている人もいるだろう。

しかし、今回解説したとおり、トレーニング歴のあるボディビルダーやフィジークアスリートも積極的にスピードトレーニングを取り入れていいのだ。

スピードトレーニングに限らず、より多くのトレーニング法を知っておくことでバリエーションは増えていく。バリエーションが豊富であれば、筋肉に新鮮な刺激を継続して与えることができる。スピードトレーニングを試したことがない人は、さらなる筋発達のためにもぜひ挑戦してほしい。明らかに今までと違った新たな刺激を経験することができるはずだ。

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