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年の差19歳の筋肉夫婦が掴み獲った日本女子フィジーク選手権の表彰台まであと一歩の軌跡

昨年の日本クラス別選手権優勝、そして日本選手権4位入賞という、誰が見てもトップランカーにふさわしい原田理香選手。しかし、今まで素顔は語られてこなかった選手の一人でもある。今回のインタビューでは、その原田選手の人物像に迫ることができた。

取材・文:月刊ボディビルディング編集部 撮影:山本健太 大会写真:中島康介

女子フィジーク日本選手権4位「表彰台まであと一歩」原田理香

――ゴルフが趣味だとお伺いしていますが、トレーニングも並行して取り組んでいたのでしょうか。
原田 トレー二ング自体は15年前からやっていましたが、本格的には取り組んでいませんでした。
――何が理由でトレーニングを?
原田 私はもともと、すごくガリガリだったんです。体力もなくて、ゴルフでは飛距離が伸びませんでした。それで、体力をつける目的でジムに入会したんです。
――それが15年前ということですが、トレーニングを始めてからゴルフは上達したのでしょうか。
原田 最初の方は、トレーニングのやり方も分からなかったので、ただジムに行って有酸素運動をするというのを5年ほど続けていました。そんなこともあり、当初はゴルフには特に良い影響はありませんでした。それが、しっかりウエイトトレーニングを行うようになってから、どんどんとゴルフで飛距離が伸びて効果を実感できました。
――10年前に取り組んでいたメニューは覚えていらっしゃいますか?
原田 最初は、マシンを中心としたメニューを行っていました。でも、10年前のことなのでうろ覚えです(笑)。
――現在のように分割を組み始めたきっかけは何だったのでしょうか。
原田 ウエイトトレーニングを一人でやっていたとき、当時通っていたジムにボディビルダーの方がいました。その方にメニューの組み方などを教えていただいたことがきっかけでした。
――分割法を取り入れてからの身体の変化はどうでしょうか。
原田 身体がすごく大きくなったというのはなかったですが、上腕二頭筋やその他の筋肉のセパレーションなどを感じれるようになっていきました。
――初の大会となった2018年の西日本選手権には、何が理由で出場したのでしょうか。
原田 それは、私の夫で17年に一緒にレモンジムを開いた(原田)大智に、「何かしら大会に出てみない?」と言われたんです。2人が出会った当初から、大会に出ようとは言われていたんですが(笑)。
――レモンジムのオープンは17年の11月でした。そこからフリーウエイトが中心のメニューなどになったのでしょうか。
原田 レモンジムを開く前から、フリーウエイトの多いジムには通っていました。そのジムに行き始めてから身体の変化がさらにありましたが、そこで大智と出会いました。そして、大智にトレーニングを教えてもらう中で、より成長を感じることができたんです。
――大智さんの影響力はすごいのですね。
原田 そうですね、それは本当に明らかに分かりました。
――ところで、なぜ『女子フィジーク』のカテゴリーを選んだのでしょうか。
原田 私は何も分からなかったので、大智にお任せした結果、そうなりました(笑)。また、大智には「筋肉量的に女子フィジークが向いている」と言われました(笑)。私自身、当時はボディフィットネスもビキニフィットネスも分かっていなかったので、完全に大智の言われるがままという感じでした(笑)。
――ボディフィットネスとビキニフィットネスのカテゴリーがあるということを知らなかったのですね?
原田 そうなんですよ(苦笑)。本当に何もかも知らなかったんです。
――18年に西日本選手権に初出場して優勝を果たしましたが、大智さんからはどのようなアドバイスがありましたか?
原田 トレーニングは、それまでと変わりはなかったですが、食事は教えてもらったものを的確に取っていました。
――コンディションはいかがでしたでしょうか。
原田 私はもとからコンディションが良いタイプでしたが、減量したらそれがさらに良くなっていきました。
――もとは細い体質だと最初におっしゃっていましたが、トレーニングをしてきて身体が成長したうえで減量してみてどうでしたか?
原田 「私ってこんなふうになるんだ」と思いました(笑)。見たことのない自分の姿だったので、面白かったですね(笑)。
――初大会のステージはどうでしたか?
原田 緊張と不安でいっぱいで、大智に「私、大丈夫かな? いけるかな?」とLINEしていました(笑)。それは今でも変わらなくて、ステージから戻ったら必ず大智にLINEをして、「どうだった?」と聴きます(笑)。私自身はそんなに自信がないので、いつもそうやって確認しています。
――西日本選手権で優勝された当時の感想は。
原田 私、当時は西日本選手権がどれだけすごい大会かをまったく理解していませんでした。わけも分からず、大智に言われるがままに出場したんですから(笑)。今思えば、ただただびっくりです! 西日本選手権に出る前に、地方選手権に出ることが普通の流れであるということは今になって分かってきましたが、その当時は完全に大智に任せていました(笑)。
――言うなれば、日本を半分にした西側の大会で優勝したわけですから、それはすごいことです。
原田 今考えたら、私はすごいことをしたんだなと(笑)。
――その後は同じ年に日本選手権に出場されました。それまでの期間は約2カ月間でしたが、何か取り組んだのでしょうか。
原田 日本選手権も言われるがままに出場したのですが、トレーニングも減量も特に変わらずに日本選手権を迎えました。
――日本選手権ではいきなり11位に入賞、すなわちファイナリストとなったわけですが、やはり驚いたことでしょうか。
原田 まず、日本選手権の会場に着くと、びっくりするくらいすごい選手たちがいて、しかも日本各地からトップレベルの選手が集まってきますよね。その中で私が11位、ファイナリストに入れたのはすごくびっくりでした(笑)。
――18年の日本選手権で結果を出すことができ、次の目標ができたのでしょうか。
原田 翌年はジャパンオープン選手権と日本クラス別選手権で良い成績を残すということでした。
――19年のシーズンに向けて、新たに取り組んだこととは。
原田 ポージング練習にしっかり時間を費やすようにしました。
――18年シーズンは全くポージング練習をしていなかったと?
原田 そうではありませんが、私はすごい不器用なんです。なので、ポージング練習は他人の倍はしないといけないのかなと。そんなふうに感じているので、19年シーズンではしっかり取り組むようにしました。
また、肩が弱点ということもあって、そこをしっかり鍛えることを意識し始めました。じつは私、初めての大会に出る前まで、それまで肩のトレーニングをしてこなかったんです。
――それは理由があってのことでしょうか。
原田 最初は、ただ単に良い身体になりたいという気持ちでトレーニングをやっていましたが、肩は良い身体になるために必要という認識がなかったんです。
――それが変わったのはいつのことですか?
原田 大会に出てみて「肩がないとだめなんだ」と。大会の写真を見て振り返ると、肩が足りないと気が付いたんです。それが19年の強化すべきポイントになりました。今まで自分で取り組んでいたのを、大智に見てもらい始めました。
――肩以外で、大会に出るうえで必要なポイント、強化ポイントはあったのでしょうか。
原田 背中の厚みでした。そこに対しては、デッドリフトをやってみたりしました。
――19年はジャパンオープン選手権2位、日本クラス別選手権2位、日本選手権8位と、順調に階段を駆け上がっていったように感じます。
原田 まさか、そんなに良い成績を残せるなんて思ってもいませんでした。先ほども言いましたが、自分にそんなに自信がありません。でも、大智にはいつも、「自信を持って」と言われます。広島は、比較できる選手がいないんです。そういう環境にいるので、自分の立ち位置が分からないんですね。だから、大会に出るまで分からないんです。
――自信がないとおっしゃいますが、日々のモチベーションになっているものはあるのでしょうか。
原田 今は大会に出ることがモチベーションとなっています。また、SNSでいろんなものを見てモチベーションを上げています。
――ゴルフのためにトレーニングをしていた時代のモチベーションは?
原田 飛距離を伸ばすことでした。
――どちらも結果を出すためのモチベーションですね。大智さんと出会った当初のモチベーションは?
原田 それまで我流でトレーニングをしていましたが、16年に初めて大智に出会ってトレーニングを教えてもらっていく中で、身体がどんどん変わっていくこと。それが楽しくて、「もっともっと良い身体になりたい」ということがモチベーションとなりました。
――先ほど、ポージングについてお伺いしましたが、それを行うにあたって何か理想像みたいなものはあるのでしょうか。
原田 私はリズム感がなくて、ポーズもしっかり決まらないというか……。だから、大澤直子選手のフリーポーズを見て、そんなふうにできたらなと練習しています。まだまだ上達の余地はありますが(笑)。
――フリーポーズでは、何かこだわりがあるのでしょうか。
原田 ……。じつは大智にフリを考えてもらっているんですよ(苦笑)。でも、曲は自分で選んでいます。選んだ曲で大智に流れやフリを加えてもらいます(笑)。
――二人三脚で取り組んでいるのですね。ところで、16年に大智さんと出会ってから、今までで「すごく成長した」というものはなんでしょうか。
原田 これは“全て”において成長しました。そして、ファッションまで変わったんです(笑)! 
――ファッションまで!?
原田 若い旦那さんですから(笑)。ちなみに年の差は19歳あります(笑)。
――世間的には離れた歳と言える年の差ですが、原田選手はどのように感じましたか?
原田 結婚するときに、「私で大丈夫ですか?」という感じでした。「19歳も違うけど、こんな自分をもらってくれるんだ」と、申し訳ない気持ちもありました(笑)。親にも心配されました(苦笑)。
――本当に年齢はただの数字だと思わせてくれる、そんな仲睦まじいお2人が想像できて、こちらまで幸せになります! それでは、最後にお伺いしますが、ずばり今年の目標はなんでしょうか?
原田 まず、最初にジャパンオープン選手権で優勝です。昨年は5位と悔しい結果に終わってしまい、初めての挫折を経験しました。ファーストコールで呼ばれなかったことがショックで、フリーポーズではフリが飛んでしまいました……。だからこそ、ジャパンオープン選手権は優勝したいです。
――勝つための秘策はあるのでしょうか。
原田 秘策ではないですが、昨年もポージングは指摘をいただいたので、しっかり練習することです。そして、その完成度を高めたいと思います。


はらだ・りか
1975年2月17日生まれ(47歳)、広島県出身。身長168㎝、体重54㎏(オン)64㎏(オフ)、トレーニング以外の趣味はゴルフ。
2018年、ボディビル競技者であり、ジム経営者の肩書を持つ夫に才能を見出され、突如西日本選手権で大会デビュー、いきなり優勝を果たす。昨年の日本選手権では4位に入賞し、あと一歩で表彰台というところまで上り詰めた実力派選手。
主な戦績:
2018年西日本選手権優勝、日本選手権11位
2019年ジャパンオープン選手権2位、日本クラス別選手権2位、日本選手権8位
2021年ジャパンオープン選手権5位、日本クラス別選手権優勝、日本選手権4位

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