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最も効率的かつ機能的なスクワットを行う方法は担ぎ方にヒントあり

人間の身体の中心は骨盤であると言われています。筋肉には両端に起始と停止があり、関節を跨いで骨に付着しています。筋肉が収縮することでその関節が動くのですが、文字通り筋肉の始まりに当たる側を起始、終わりに当たる側を停止と言い、始まりに当たる起始はほとんど全てが骨盤に近い方を言います。従って人間の身体の中心は骨盤であると考えられることが多いのです。
では末端はどの部分を指すのでしょう。骨盤が中心であると定義すると、その末端は手、足、そして頭部になります。そしてその中でも一番重くて体積があるのが頭部です。従って人間の動きはこの頭部をどれだけ効率的に移動させるのかが鍵になっていきます。

最も自然なスクワットとは何か?

陸上の100m は頭を100m 先に水平方向にできるだけ速く、効率的に移動させる競技であり、自体重で行うスクワットも当然頭部を垂直方向に移動するエクササイズだと言えます。そしてそれが人間のごく自然な動きであると言えるでしょう。では、バーベルを担いだスクワットはどうでしょう? バーベルを担ぐ位置にもよりますが、バーベルの形状上、頭部の後ろに重りが来ることになります。そしてバーを担ぐ位置が低くなるほど(ローバースクワット)、頭から重り(プレートの中心)の距離が離れて行くことになります(写真1)。

この場合、股関節から重りの距離が短くなるので、高重量が扱え、殿筋の収縮も強く行えるのですが、実際の日常やスポーツの動きとは程遠くなってしまいます。フロントスクワットは首の前にバーベルを位置することになるので、こちらの方がバーベルと頭部の距離は近くなります(写真2)。そして身体の前面にバーを保持するのに、体幹に対してより強く「抗屈曲(身体が前に倒れないように身体を保持する)」の能力が高まります。従って、バーベルを身体の後ろに担ぐ「バックスクワット」よりもバーベルを身体の前で保持する「フロントスクワット」の方が、人間の機能の面で考えるとより自然なスクワットであるということが言えます。

試しにバックスクワットとフロントスクワットの両方を行ってみて、どちらがしゃがみ込みやすいかを試して見てください。大半の方はフロントスクワットの方がしゃがみ込みが行いやすいと言われます。これは普段私たちの「主要な重り」は頭部であり、この頭部を移動させることが、走る、歩く、立ち上がるというような自然な動きにつながるということであると言えます。

では、もっとバーベルを頭の位置に近づける方法はないでしょうか? 答えは存在します。「セーフティスクワットバー」というアタッチメントを使ってスクワットを行う方法です。写真3のように特殊な形のバーを用いてスクワットを行うのですが、この場合バーベルのプレートがより頭の横に位置するように設計されているのが分かると思います。そしてセーフティバーの良いところは肩の柔軟性がなくてもスクワットが可能であるということです。安全性も含めてあまり推奨はできませんが、手をバーから離しても当然バーが落ちることはほとんどないのです。セーフティスクワットバーは非常に便利なツールであると言えます。
セーフティスクワットバーがない場合でも同じぐらいか、もしくはそれ以上の効果が期待できるスクワットがあります。それがダンベルを用いたフロントスクワットです(写真4)。これは写真を見て分かるように、頭のすぐ横にダンベルが位置する姿勢になります。身体の前後(矢状面)の重心において、ほぼ頭と同じ位置にダンベルがあるので、より自然にスクワット動作が行えるのです。試しにこの状態で、スクワット動作を行ってみると、フロントスクワット以上にしゃがみ込みやすくなっていると感じられると思います。今回は最後にダンベルを用いたフロントスクワットについて行い方を解説していきます。

ダンベルフロントスクワットの行い方

最初にダンベルを肩の位置に乗せます(写真5)。ダンベルが重くなると多少勢いをつけてダンベルを肩の位置に挙げると思いますが、このときくれぐれも顔にダンベルをぶつけないように注意してください。スタート姿勢からそのまま踵にお尻をつけにいく感じでしゃがみ込んでいきます(写真6)。このような軌道でしゃがみ込むと感じるのは、バックスクワットよりもより自然な動きでできるということです。もしあなたが身体の機能性を求めるなら、このようなフロントスクワットを行うことで、より身体の機能が高まるきっかけになるのではないでしょうか。


著者プロフィール
井上大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/NSCACSCS/NPO法人JFTA理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF全日本ボディビルディング選手権6位。

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