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ウエイトリフターの先輩と後輩!山本俊樹が語る村上英士朗

全日本選手権では3連覇を含む5度の優勝、昨年は世界選手権89㎏級でジャークで1位となった山本俊樹選手(ALSOK)。昨年5月に全日本選手権、12月には中国・天津で開催されたワールドカップの109㎏超級を制した村上英士朗選手。ウエイトリフティングの先輩である山本選手に村上選手のことを聞いた。

取材:藤本かずまさ 写真協力:村上英士朗

英士朗を初めて見たのは、彼がまだ高校3年生のときです。東京国体の会場のトレーニング場でした。「俺の練習を見ろ!」と言わんばかりの態度でトレーニング場に入ってきて、バーベルを握ったかと思えば、マッスルスナッチで110㎏を軽々とやっていました。その約1年後、彼は大学生になってナショナル(チーム)に入ってきたんですが、練習場での態度がすごく偉そうで(苦笑)、同期の(糸数)陽一と「なんかヤバイやつがきたな」と話したのを覚えています。その直後、日大の先輩にあたる陽一が彼のところに行って、思いっきり怒っていました。よく言えば、天然なんです。性格的にかなり抜けている部分があるので、余計なことは考えず無心になって練習に取り組めるというのはあると思います。

また、やる気のあるとき・ないときがすごくはっきりしていて、疲れているときは40~60㎏くらいでフォームの練習をしたりするんです。普通だったら、「今日は疲れているけど週末だから追い込もう」とか思うんですが、そういうことが一切ない。その反面、調子のいいときはリミッターを外したような感覚でバンバンと挙げていきます。そのオン・オフの切り替わりはすごいですね。彼の性格とリンクしている部分は感じます。

スクワットの強さでも注目されていますが、スクワットはやり込むことも重要なんですが、メンタル的な要素のほうが圧倒的に強いと思います。彼はスクワットに取り組むときの姿勢は自分の中で重視していると思います。スクワットをやっているときの彼は、他の種目を練習しているときよりも真剣です。「ゾーンに入る」ということを意図的にできるんだと思います。そういうところに彼の強さがあると思います。僕は昨年の世界選手権でジャーク種目で金メダルを獲って、そのとき英士朗ともいろんな話をしたんですが、世界大会に出場するときにメディアに取材してもらっても、日本人選手は「失格しないように頑張ります」とか、見出しにならないようなコメントを出し続けてきたと思うんです。僕は日本にいる間からも「メダルを獲ります」と発言しようと決めました。だから、世界選手権に行く前も、取材してくれようが、してくれまいが「メダルを獲ります」と言い続けてきました。英士朗は、そんな僕の姿を見てくれていたんです。

実際に現地でメダルを獲って日本に帰ってきたら、英士朗が「僕もメダルを獲りたいです」と言ってきました。だったら口に出して発言したほうがいいと。約2カ月後、ワールドカップに向かう空港で取材を受けた彼は、「金メダルを獲って帰ってきます」と発言していました。そう口にした彼は、現地での顔つきも違っていました。そして、実際に金メダルを獲りました。彼は109㎏超級という日本の最重量級で一番の力持ちになりました。日本人は重量級では勝てないなどのレッテルを貼られがちなんですが、彼のいい意味での破天荒さで全て払拭してほしいと思っています。


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