12月17〜19日の3日間、東京の有明コロシアムで開催された『IFBB世界フィットネス選手権&男子ワールドカップ』。総勢113名の日本代表選手が派遣され、数多くのメダルを獲得した。フィットモデルもそのうちの一つで、鈴木由香(すずき・ゆかり/37)選手は今大会のマスターズ35歳以上級で3位に輝く。
2023年にフィットモデルデビューし、2024年は12月の世界大会を目標に突き進んできた。9月に国内大会である『オールジャパン』で安井友梨選手に次いで2位となり、日本代表メンバーに選ばれる。世界大会までの3カ月という限られた時間の中で取り組んだのは、「毎日のポージング練習と、露出部分の強化」だったと教えてくれた。
フィットモデルのカテゴリーでは、ドレスとスイムスーツの2種類が衣装。身体が見える部位が少ないからこそ、露出している部位に振り切ったトレーニングが必須となる。鈴木選手が残りの3カ月で特にやりこんだのはお尻と上背部だった。
週6日のトレーニングのうち、背中・肩・四頭・ハムで分け、残り2日をお尻のみの日に当てたという鈴木選手。つまり週に4日、下半身のトレーニングをしていたことになる。減量が進む中でも、ルーマニアンデッドリフト、ブルガリアンスクワットといった王道の種目を低重量・高回数でやり込む熱血さに、身体も応えてくれたのだろう。3カ月という短期間でも特にお尻は引き締まり、トップの位置も高くなった。
「ただ海外の選手と並んでみたときに、まだまだ太刀打ちできていない、もっと考えて作り込まないといけない、とは思いました。骨格からして違う海外の選手と渡り合うためには、足りない部分を埋めていくしかないので」
もう一つ、フィットモデルならではの特徴として鈴木選手が挙げていたのは“衣装”だ。身体づくりと同様、衣装作りも非常に大事なのだという。身体を覆うからこそ、あしらうストーンの配置、色味やグラデーションの始まり位置によって、視覚効果でボディラインを作ることができる。
鈴木選手自身もドレスは自分でデザインし、専門業者にフルオーダーしている。2024年のシーズンで着用したドレスはとにかく好評だったそうで、「私の良さをさらに引き出してくれる1着を作れました」と笑みをこぼす。一方、スイムスーツ作りはまだその境地まで辿り着けていないそうで、「これからの課題ですね」と苦笑。
「フィットモデルの衣装は私に特別なパワーを与えてくれるんです。衣装を着ると、自分がすごく強くなったような気持ちになれる。以前出場していたビキニフィットネスでは感じたことのない感情で――。私はそんなフィットモデルが大好きなんです!」
鈴木選手にとって初めての世界大会。審査は和やかな雰囲気で進み、ステージを見ていた海外のコーチがポージングの改善アドバイスをくれたり、直前に選手が「美しいね」と声をかけてくれたり。ライバル同士で火花を散らすような雰囲気はなく、この大会のためにやるべきことを準備してきたことを互いに認め合い、とにかく舞台を楽しもうという空気が流れていた。そんな世界大会を鈴木選手は「とにかく素敵だった」と話す。
お気にいりの戦闘服に身を包み、挑んだ大舞台ではかけがえのない経験ができ、そして目標にしていたメダルも手にすることができた。これまで憧れだったトップ選手が見る世界を体験できたことは学びにつながったようで、「2025年のシーズンはさらに良くなった状態でステージに立ちたい」と力強い声で話してくれた。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
取材・文:小笠拡子 撮影:中原義史
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