コンテスト womens トレーナー情報

指定難病治療中の挑戦。「そんな身体に産んでごめんね」母へ伝えたい想い

齊藤昭子さん(撮影:中島康介)5月7日(日)に埼玉・久喜総合文化会館で、マッスルゲート北関東2が開催された。総勢200名以上の選手がエントリーし、GWを締めくくる熱き戦いを繰り広げた。そんな中、ビキニ一般の部では齊藤昭子さん(34)が4位入賞を果たした。実は彼女は、ある難病を抱えていた。

【写真】齊藤さんの覚悟が表れた華麗なステージング

齊藤さんは、普段は医療従事者として働いており、忙しい日々を送っている。4年半ほど前に趣味としてトレーニングを始めるものの、次第に効果が出にくくなってきたことで悩んでいたという。

「トレーニングをしていく中で、途中から効果が出にくくなってきたんです。それだけならまだしも、日常生活でも疲労感をすごく感じるようになりました。普段から強い倦怠感や立っていられないような眠気に襲われ、トレーニングをしても効果がまるで出ないような状態でした」

齊藤さんは、「下垂体前葉機能低下症 重症成人成長ホルモン分泌不全症」という指定難病を患っている。指定難病とは、難病のうち国が定めた基準に該当する疾病のことを指す。その中でもこの病気は、成長ホルモンの分泌がされにくくなり、生活の質が大きく低下するという特徴を持つ。医師でも発見が困難だというこの難病に気付けたのは、齊藤さん自身が医療従事者であることが大きい。

「近くの病院にかかっても、よくある疾患の病態にはあてはまらないまま対処療法をするだけで、はっきりと病名は分かりませんでした。そこで、私は医療従事者として普段働いているため、その知識を生かして文献を片っ端から調べていきました。そしてこの病気の存在に気づき、当時の主治医に打診をし、セカンドオピニオンとして、この疾患を専門に診ていらっしゃる現在の主治医にかかることで、この病気を患っていることが発覚しました。この病気は完治する見込みがなく、定期的な治療を今後も行わなければいけません。主な症状として、代謝が悪くなる、疲労感が抜けない、鬱のような症状になることなどです」

筋肉の発達において、成長ホルモンの分泌は重要な要素だ。そんな重要なホルモンが分泌されにくいという身体で、なぜコンテスト出場を決意したのだろうか。

「私は医療の知識があったため気づけましたが、この病気は非常に専門的なので、自分がこの病気だと分かっていない方がまだまだいらっしゃると思うんです。私が情報発信することで、そのような方々の気づくきっかけになってくれたらいいなと思っています。『怠けてるんじゃない、頑張りが足りないんじゃない、自分を責めなくていいんだよ』と伝えたいです。また、治療を始めることを母に伝えた時に、『そんな身体に産んでごめんね』と言われたんです。母にそう思わせてしまったことが苦しかった。せめて、筋トレを楽しみながらコンテストに挑戦している姿を見せたいと思ったんです。その二つが大きな理由です」

放っておくと、骨粗しょう症のリスクが大きく高まったり、最悪命に関わるほどの難病であるこの病気を、自らの挑戦によって発信していくつもりだという齊藤さん。今後の目標とは。

「今回の大会で、楽しさを感じた以上に悔しさを感じました。最終的には、JBBFの最高峰であるオールジャパンに出場したいです。またその過程で、この病気の存在に気づき、前に進んでくれる人が一人でもいれば嬉しいです」

成長ホルモン分泌不全という身体でトレーニングを続ける齊藤さん。母のため、病気の存在を知らない多くの人のため、そして自分のためにも、彼女は挑戦を続ける。

【写真】齊藤さんの覚悟が表れた華麗なステージング

取材:FITNESS LOVE 撮影:中島康介

次のページへ >


-コンテスト, womens, トレーナー情報
-,