競技力向上に効果的なシングルレッグエクササイズ

そもそも片足と両足の違いはなんなのか?競技力向上には、どちらのエクササイズが有効なのか。井上大輔先生に解説いただいた。

文:井上大輔 <NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会>

スクワットのプログレッション

人間は本来、片手、片足で力を発揮するようにできています。両足でトレーニングを行ってもスポーツでその能力を発揮することは難しいと言われています。その理由を考察したいと思います。そもそも片足と両足の違いはなんでしょう?
その違いを以下にまとめていきます。
①バランスを取るために中殿筋と内転筋が発火する。
②足の位置が正中線(身体の中心のライン)に近づく。
③それに応じて体幹や上半身も螺旋状にバランスを取る。

動作が起こる際に、中殿筋と内転筋などの関節を安定させるための筋肉が発火することを「フィードフォワード」と言います。つまり大殿筋や大腿四頭筋で大きな力を発揮するときは、前もって中殿筋や内転筋などの「股関節を安定させる」筋肉が発火して、初めて大きな力を発揮することが可能になります。もし、これらの筋肉が発火しないで大きな力を発揮するとどうなるでしょう?

股関節が脱臼してしまうか、大きな力を出した瞬間バランスが崩れ、いずれにしても大ケガをしてしまいます。人間の頭は無意識のうちに身体の防御反応が起こります。すなわちケガを防止するために大きな力を出さないように、司令塔である脳が「抑制」をかけてしまうのです。

レッグプレスやスクワットのエクササイズは、股関節が外転(外側に開く)していますが、実際の歩行動作やランニング動作では、股関節は内転します。人間の股関節は骨盤に対して斜めについているので、内転した状態でスムーズに動くようにできています。言い換えると関節が安定した状態で運動を行うようにできているので、股関節が外転したスクワットのような動作では、深くしゃがみ込むと股関節が外れる方向に引っ張られて、これも「抑制」が働く原因となってしまいます。ハーフスクワットは高重量が扱えるのに、フルスクワットになると重量が極端に落ちるトレーニーは、このことが原因のひとつであると考えられます。

そして片足でエクササイズを行うと、上半身でもバランスを取る必要があり、上半身のスタビライザーとも呼ばれるたくさんの筋肉が連動します。

これらのことから、スクワットで作られた筋肉は、使えないのではなく、筋肉を使うためのシステムが機能していないだけと言えます。では、そのシステムを使えるようにするにはどうすれば良いでしょう? その答えのひとつが「シングルレッグエクササイズ」です。

片足でスクワットを行うことにより、フィードフォワードが起こりやすく、また足の位置が身体の正中線に近くなり、上半身も反射的にバランスを取るようになります。それではシングルレッグエクササイズの代表格である「スプリットスクワット」と「ピストルスクワット」について解説していきましょう。

写真1−1

写真1−2

●スプリットスクワット
両手にダンベルを持ち、足を前後に広げて立ちます。スプリットスタンスの(写真1 −1)重心は前足に90%後ろ足に10%ぐらいの感覚でエクササイズを行います。動作中は膝が前に出ないよう、お尻を真下に落とすようなイメージで行います。また身体は軽く前傾します。(写真1−2)下腿と体幹が並行になるようなイメージで行います。

写真2−1

写真2−2

もし、身体がグラグラする場合、(写真2 −1)のようにバンドを膝にかけて、わざと中殿筋もしくは内転筋(写真2 −2)に負荷をかけ、筋肉を活性化させながら動作を行っても効果があると思います。スプリットスクワットを私は「半片足エクササイズ」と定義し、両足エクササイズと次に説明する片足エクササイズの間に行う移行エクササイズになります。

写真3−1

写真3−2

●ピストルスクワット
完全片足で行います。深くしゃがむには写真のような「ステップ台」を使用します。片足で立ち、もう片足を前に出します。(写真3 −1)そのままできれば、かかとに殿部が当たるまで、しゃがみ込みます。(写真3 −2)このエクササイズは左右のバランスだけでなく、前後のバランスも考慮しなければならないので、極めて難しいエクササイズと言えます。

写真3−3

慣れてくるとダンベルを持ち、前に上げながらエクササイズを行うことで、カウンターバランスになり、動作を行いやすくすることもできます。(写真3−3)以上のことから、スポーツ競技力向上を目的とするならば「シングルレッグストレングス(片足筋力)」を高めることが必要となるので、これらのエクササイズを行うことをお勧めします。

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▶ベンチプレスを行うときに足をベンチの上に上げるべきか?

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