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一般的な筋力トレーニングとHIIT法を組み合わせた現状打破に効果的な筋トレ法

限界を超えることは現状を打破すること。そのために役立つのが今回紹介するEMOM法だ。EMOMは“エブリーミニッツ・オン・ザ・ミニッツ”の頭文字から名付けられたトレーニング法で、新たなレベルに筋肉を追い込むために考案されたものだ。どのスポーツのアスリートも、効率のいいトレーニングや、結果に結びつくトレーニングを求めている。ぜひ今回のEMOM法を試してみてほしい。EMOMは、一般的な筋力トレーニングとHIIT法(ハイインテンシティ・インターバル・トレーニング)を組み合わせたもので、筋力と心肺機能の両方を同時に向上させることができる。そのため、ボディビルダー、クロスフィッター、パワーリフターをはじめ、多くのスポーツでの競技力向上が期待できるのだ。

文:Sarah Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション

時間ベースのトレーニング方法

EMOMで肉体改造

これを読んでいる読者の大半は実際にジムに通っているトレーニーで、そのほとんどが選択した種目と、その種目でのセット数×レップス数を決めてワークアウトを構成しているはずだ。そして、選択した種目には3~5セットずつ行い、それを終えると次の種目に移るようにしているのではないだろうか。

セット間の休憩時間についても、大半の人は60~90秒だろう。それが一般的であり、何も間違ってはいない。実際、そのやり方で結果を出している人は大勢いるのだから、今までどおりのやり方でトレーニングを続けてもまったく問題はない。ただ、そろそろやり方を変えたい、バリエーションを増やしたい、新しい方法でモチベーションを高めたいという気持ちがあるのなら、これから紹介するEMOMを試してみてはいかがだろうか。

EMOMの最大の特徴は「時間ベース」でトレーニングを行う点にある。たとえばスクワットを10レップス行うと決めたなら、まずは10レップスのスクワットをまずは行う。それを40秒で終了したら、1分までの残り20秒間を休憩時間にする。20秒休んだら、2セット目も10レップスのスクワットを行う。2セット目は45秒かかったとすれば、1分までの残り15秒間を休憩時間にする。つまり、速いテンポでレップスを行えば長い休憩時間を得ることができ、ゆっくりしたテンポでレップスを行えば休憩時間は短くなるわけだ。

十分な休憩時間が取りたいなら速いテンポでレップスを繰り返せばいい。そうすることで心拍数は上がり、トレーニング強度も高まる。つまり、EMOMは筋力トレーニングを行いながらHIITの効果も得ることができるということだ。

EMOMでは選択した種目を数セット行ってもいいし、複数の種目を組み合わせてサイクルにして行うこともできる。いずれにしても、「1セットを終えるのにかかった時間+休憩時間」を合わせて1分間で区切り、それを1セットとしてカウントすればいいのだ。

休憩も含めて1分間というのはかなりの高強度だ。それでも、10分間ぐらいなら続けられそうだとは思わないか。あるいは、体力と持久力に自信がある人なら30分間にも挑戦できるかもしれない。ただし、それ以上の時間がこなせるのは相当に能力が高い人だけだ。実際、EMOMでワークアウトを行うと、最長でも30分が限界である。これは逆にいえば、わずか30分間のワークアウトでも、EMOMを用いると高強度の内容でトレーニングを行うことができるのだ。休憩時間も含めて1分間のセットとしてカウントするので、30分間はほぼフルに動いている状況になるのだからかなりの高強度になることは間違いない。

体脂肪の減量にもEMOM

EMOMでは、ワークアウト中はほぼ動きっぱなしになるので、当然、代謝も向上する。ちょうど有酸素トレーニングとしてよく行われているHIIT(ハイインテンシティ・インターバルトレーニング:高強度と低強度の運動を交互にサイクルにして繰り返すやり方)やMOD(モデレートインテンシティ・トレーニング:中強度の運動を継続して行うやり方)をウエイトトレーニングと組み合わせたようなもので、筋肉への刺激だけでなく体脂肪の減量にも役立つのだ。

EMOM、HIIT、MODを混同しないようにするため、それぞれの特徴を明確にしておこう。
■EMOM:休憩時間を含めて1セットと捉え、1セットは1分で完了することが基本となる。休憩も含めて1分間を制限時間とするので、使用重量を重くしてレップススピードを遅くしたやり方でも、重量を軽くして速いテンポで繰り返すこともできる。速いテンポで行えばセット間の休憩時間を長く取ることができ、高重量でゆっくり行えば休憩時間は短くなる。様々なやり方でトレーニングすることができるが、どんなやり方で行っても代謝を高め、筋肉を限界まで追い込み、効率よく刺激することができる。
■HIIT:高強度と低強度の運動を交互に繰り返すやり方で、もっぱら有酸素運動に用いられる。HIITの高強度部分では最大心拍数の80%以上の負荷をかけるようにするが、EMOMにはそのような定義はない。それでも、HIITのように運動後のカロリー燃焼を高め続ける作用はEMOMにもあるので、脂肪燃焼にも役立つと見なされている。
■MOD:中強度の負荷をかけながら、それを持続させるやり方だ。MODで用いられる負荷は最大心拍数の55~70%で、HIITの高強度部分よりは負荷が低い。それでも、一定の強度で持続的に運動を繰り返すので、筋持久力は向上すると考えられる。

体脂肪燃焼と筋発達の両方を得る

短時間でトレーニング全体の強度を高め、筋肉の機能向上だけでなく、体脂肪減量の促進効果も高められるのがEMOMの特徴だ。だからEMOMは、HIITとMODを混合させたようなトレーニング法であると認識されている。

では具体的にどのような内容でEMOMを用いることができるだろうか。早速、以下の二つについて紹介していきたい。
●筋肥大を目指しつつ、体脂肪の減量に重点を置いたやり方
●筋量の増加をメインにしたやり方

体脂肪減量を優先する場合

一般的に一回のワークアウトで全身の筋肉を刺激する内容にすると、大筋群のすべてがまんべんなく刺激を受ける。一回のワークアウトの中で大筋群のすべてが刺激を受けると、より多くのカロリーが燃焼されるので、体脂肪の減量もはかどることになる。もちろん、大筋群はしっかり鍛えられるので、総合的な筋力アップにもつながる。

EMOMを取り入れた全身のワークアウトは、短時間ですべての大筋群が刺激を受け、かなり息が上がるワークアウトになる。代謝が高められ、体脂肪減量に役立つやり方であることを体感できるはずだ。

■フルボディブラスト#1
※①~④を連続して行い、トータルで3~4サイクル行う。
①ケトルベルスウィング(ケトルベルを両脚の間に保持し、身体を起こしながら身体の正面にケトルベルを振り上げる)
20レップス
※20レップスを終えたら、1分までの残り時間を休憩して次の種目を開始する。
②縄跳び
80レップス
※80レップスを終えたら、1分までの残り時間を休憩して次の種目を開始する。
③バーピーズ(立った姿勢からしゃがんで両手を床につけ、両足を後方に伸ばして腕立て伏せのスタートポジションを作る。そこから両手を床につけたまま跳ねて、再び両足を前にもどし、しゃがんだ姿勢から立位姿勢に戻って1レップとする)
10レップス
※10レップスを終えたら、1分までの残り時間を休憩して次の種目を開始する。
④プッシュアップ(腕立て伏せ)
10レップス
※10レップスを終えたら、1分までの残り時間を休憩して最初の種目に戻る。

■フルボディブラスト#2
※①~④を連続して行い、トータルで3~4サイクル行う。
①ケトルベル・レネゲードローイング(両手にケトルベルをそれぞれ持ち、ケトルベルを床につけて腕立て伏せの姿勢を作る。片側のケトルベルを引き上げて下ろす。左右交互に行う)
20レップス
②ケトルベルスクワット(ケトルベルを両脚の間に保持して行うスクワット)
15レップス
③プルアップ
10レップス
④バイク・クランチ(床に仰向けになり、両足を床から浮かせて真っ直ぐ伸ばす。この姿勢から片側の膝を曲げて胸に引きつけ、再び伸ばす。左右交互に自転車をこぐように膝を引きつけて伸ばす動作を繰り返す。足は終始床から浮かせておく。両手は頭の後ろに組み、上背部は床から浮かせておく)
20レップス

■フルボディブラスト#3
※①~④を連続して行い、トータルで3~4サイクル行う。
①オルターネイト・ステーショナリーランジ(正面を向いて立ち、片足を前に踏み出してしゃがむ。前に出した足をスタート地点に戻したら、反対側も同様に行う。オルターネイトは左右交互にという意味で、ステーショナリーは固定された位置を意味するので、左右交互に、場所を移動せずにランジを行う)
30レップス
②メディスンボール・スラム(両足を開いて立ち、身体の正面に腕を伸ばしてメディスンボールを保持する。保持したところから勢いをつけてボールを床に叩きつけ、跳ね上がってきたところを両手でつかむ。一回一回を全力で行うこと)
20レップス
③ウォールボール(壁に向かって立ち、顔の前で大きめのメディスンボールを保持する。ボールを壁に沿って投げ上げ、落ちてきたボールを顔の前で受け取ったらそのまましゃがみ、立ち上がるときに再びボールを投げ上げる)
20レップス
④プランク・ウィズ・ショルダータップ(腕立て伏せの姿勢を作ったら、右手を床から浮かせて左肩に触れる。右手を床に戻したら、今度は左手を床から浮かせて右肩に触れる。左右交互に繰り返す。動作中、腕立て伏せの姿勢は終始保っておく)
20レップス

筋力アップを優先する場合

EMOMは、筋力アップをメインにしたいというトレーニーにも推奨できるトレーニング法だ。筋力アップのためのウエイトトレーニングでは、選択した種目で10レップスやることを目標にしている人が多いはずだが、EMOMでは10レップスできる重量で3~5レップスしか行わない。それでは全然追い込めないと思うかもしれないが、ワークアウトを最後まで行うと疲労困憊するまで全身の筋肉が限界を迎えていることがわかるはずだ。

そもそもEMOMでは、1セットだけで対象筋を追い込むようなことはしない。ワークアウトを最後まで行ってこそ効果が得られるので、最後までエネルギーを持続させるように意識する必要があるのだ。また、セット単位で追い込まないということは、正しいフォームが維持されやすくなるということでもある。正しいフォームを意識してトレーニングを継続できるので、ケガを負う危険性も低いのだ。

なお、実際にEMOMで筋力を向上させた上級者は、EMOMだけにこだわらず、通常の筋力向上のためのトレーニング法と組み合わせて行ったほうがいいだろう。通常の筋力向上のためのトレーニング法とは、目標の使用重量を定めたら、ゴールに到達するまでに定期的に使用重量を増加させてワークアウトを続けるやり方のことだ。

2011年に発表された研究によると、数週間にわたりトレーニング量を増減させたやり方で被験者にワークアウトを続けてもらったところ、被験者の基礎代謝量、ホルモン分泌量が変化し、筋肥大と筋力向上に大いに貢献したという結果が得られている。

つまり、EMOMがどれだけ効果的だったとしても、一つのトレーニング法にこだわったやり方を続けることは決してプラスにはならないということを覚えておこう。

筋力向上のためのEMOMでは、バーベルを使った多関節種目でワークアウトを構成するのがいいだろう。たとえばベンチプレス、デッドリフト、スクワット、様々なバリエーションがあるオーバーヘッドプレスなどだ。

●1週目:選択種目×1RMの60%の重量×5レップス
※1RMは1回だけできる最高重量。
※5レップスを終えたら1分までの残り時間を休憩し、次のセットを開始する。
※10分間続ける。
●2週目:選択種目×1RMの70%の重量×4レップス
※4レップスを終えたら1分までの残り時間を休憩し、次のセットを開始する。
※10分間続ける。
●3週目:選択種目×1RMの80%の重量×3レップス
※3レップスを終えたら1分までの残り時間を休憩し、次のセットを開始する。
※10分間続ける。

筋量アップを優先する場合

筋肥大に効果的なレップス数は6~12レップスで、種目ごとに3セットずつ行うのがいいというのが今の常識のようだ。加えて、セット間の休憩についても30~60秒間が望ましいというのが多くの専門家たちの共通した考え方だ。

しかし、先にも述べたとおり、ひとつのやり方にこだわることは筋発達を継続させていく上でプラスにならない。伝統的なやり方にとらわれず、豊富なバリエーションを作ってプログラムを組むことが継続的な向上をもたらすのだ。

筋量を増やすためのEMOMでは、これまでと同じ使用重量を扱うが、レップス数は3~5レップスまで減らし、ワークアウトは15~20分間で完了させるようにする。もちろん、筋力向上のためのEMOMと同じように、定期的に使用重量を増やしてかまわない。ただし、3~5レップスで限界が来てしまうような重量は扱わないこと。場合によっては1回のワークアウト時間を20分以上に延長させてもいい。

筋量アップのためのEMOMは上半身と下半身を分けるやり方、プッシュ系とプル系に分けるやり方、全身を部位ごとに分けるやり方などがある。

上半身と下半身に分ける

※上半身のワークアウトを行ったら翌日は下半身のワークアウトを行う。
※ワークアウトを開始する前に、種目で使う器具(重量)をあらかじめすべて準備しておく。ジムが混んでいる時間帯だと器具のキープは難しいので、その場合はトレーニングに行く時間を変更したりして工夫する必要がある。
※上半身と下半身を一日ずつ行ったら、3日目は休み、4日目と5日目で同じように上半身と下半身のワークアウトを行って一週間のスケジュールとする。
※1週目は4サイクル、2週目は5サイクル行い、3週目は使用重量を増やして3サイクルから開始していくようにする。

[上半身のEMOMワークアウト]
①バーベル・ベンチプレス
3~5レップス
②ダンベル・オーバーヘッドプレス
3~5レップス
③アップライトローイング
3~5レップス
※いずれの種目も正確なフォームが維持できる範囲での高重量を選択する。
※①の種目を3~5レップス行ったら、1分までの残り時間を休憩してから②の種目を開始する。同様にして②の種目を終えたら③の種目を行って1サイクルとする。
※トータルで3~5サイクル行う。

[下半身のEMOMワークアウト]
①バーベル・バックスクワット
3~5レップス
②デッドリフト
3~5レップス
③フロントランジ(両手にダンベルを保持して行う)
3~5レップス
※いずれの種目も正確なフォームが維持できる範囲での高重量を選択する。
※①の種目を3~5レップス行ったら、1分までの残り時間を休憩してから②の種目を開始する。同様にして②の種目を終えたら③の種目を行って1サイクルとする。
※トータルで3~5サイクル行う。

プッシュ系とプル系に分ける

全身を上下で分けるやり方の他に、体の前面と背面とで分けることもできる。その場合は種目をプッシュ系とプル系に分けてワークアウトを組めばいい。EMOMでプッシュ系とプル系に分けてワークアウトを組む場合の参考例を紹介しておく。

[プッシュ系ワークアウト(体の前面)]
①ダンベル・チェストプレス
②インクライン・ダンベル・チェストプレス
③オーバーヘッドプレス
※使用重量は1RMの60~70%。
※①~③の種目を4~6サイクル行う。

[プル系ワークアウト(体の背面)]
①デッドリフト
②バーベルローイング
③ワイドグリップ・ケーブルローイング
④プルアップ
※挙上重量は1RMの60~70%。
※①~③の種目を4~6サイクル行う。

部位ごとに分割する

全身を部位ごとに分割したワークアウトがいいという人も多いはずだ。参考までに脚と腕のワークアウトを紹介しておく。

[脚のワークアウト]
①レッグエクステンション
②レッグカール
③アダクターマシン
④アブダクターマシン
⑤グルート・キックバックマシン
※各種目は4レップスずつ行う。
※使用重量は1RMの60~70%。
※①~⑤の種目を3、4サイクル行う。

[腕のワークアウト]
①プリーチャーカール
②スカルクラッシャー
③コンセントレーションカール
④ダンベル・トライセップスエクステンション
⑤ダンベル・テイトプレス(フラットベンチに仰向けになり、両手にダンベルを握って肘を伸ばす。そこから左右の拳を合わせるようにしてダンベルを胸まで下ろす。この際、ダンベルを持つ手の甲は頭側を向き、親指は下を向いているはずだ。下ろす際は左右のダンベルのプレートをしっかり付けて動作を行う。トップまで戻したらダンベルを左右の離して、肘を伸ばすようにする)
※各種目は4レップスずつ行う。
※使用重量は1RMの60~70%。
※①~⑤の種目を3、4サイクル行う。

結論

効率よく時間を使いたい。しっかり筋肉を刺激して、確実な結果に結びつけたい。ありきたりのやり方には飽きてしまった。レップス、セット、休憩時間をしっかり管理したい。そんな人たちにとってEMOMはまさに理想的なやり方である。

制限時間を設けて、その中でレップスをこなして休憩も取っていくというのは想像している以上に過酷である。決して楽なやり方ではないし息も上がって辛いと感じるだろうが、EMOMでワークアウトを完了させると大きな達成感を味わうことができるはずだ。

筋量や筋力アップを優先させるなら多関節種目でワークアウトを構成しよう。減量したいというのであれば重量やレップスのテンポにかかわらず、より正しいフォームで動作を繰り返すこと。

セットごとの疲労感はさほど大きくないかもしれないが、ワークアウトを最後まで行うとEMOMがどれだけ高強度であるかがわかるはずだ。

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