筋トレ効果を最大限高めるために「自分に最適なトレーニングを知る」

筋トレに励む私たちにとって、全身の筋肉をバランスよく極めたいという願いは誰にだって共通している。それなのに、筋トレを続けていくと、得られる結果は人それぞれだということがわかってくる。個々人によって差が生まれる理由は何か? 体質が異なる、ジムに頻繁に通えない、トレーニング時間に制限がある、トレーニング内容が違うなど、様々な理由があるわけだが、トレーニング結果を他人と比較したところで意味がない。肝心なのは、現在のトレーニングが自分に最適であるかどうか。つまり、自分が持っている能力を最大限に発揮できる内容で、効率よく筋発達を望めるトレーニングを行っているかどうかだ。

文:Jack Nathanson, CSCS 翻訳:ゴンズプロダクション

メタボリックダメージとメカニカルファティーグ

トレーニング用語の中にメタボリックダメージとメカニカルファティーグという言葉がある。

メタボリックダメージを直訳するなら「代謝的被害」、メカニカルファティーグは「機械的疲労」といったところだ。

実は、この2つの言葉の先には筋発達があり、この2つを得るためにウエイトトレーニングがあるのだ。

■メタボリックダメージ:ウエイトトレーニングを行って筋肉に負荷をかけると、筋中にある収縮タンパク質が傷つく。収縮タンパク質は筋肉を構成する元である筋原線維のことで、筋肉が刺激を受けると、収縮性のある筋原線維が収縮して出力が行われる。

■メカニカルファティーグ:収縮タンパク質が傷つくと、やがてメカニカルファティーグが起きる。それによって筋線維1本1本が肥大する反応が起きて、これが結果的に筋肥大へとつながるのだ。ちなみに、メカニカルファティーグが起きるのは、運動によって筋線維が傷つき、筋線維の中に蓄えられていたATP(アデノシン三リン酸)が消費されて枯渇し、収縮タンパク質が収縮できなくなったときである。

このように、筋肉を発達させるには、メタボリックダメージとメカニカルファティーグの両方を起こすことが条件となり、この2つを実現させる要素を備えたウエイトトレーニングこそが筋発達には不可欠ということなのだ。

やっかいな適応能力

ただ、問題になってくるのは私たちに備わっている適応能力で、これがあるために筋肉は一定の刺激に対して慣れてくるようになる。刺激に慣れてしまうと、筋肉は毎回のワークアウトでメタボリックダメージやメカニカルファティーグを起こしにくくなり、筋発達の条件を満たせなくなってしまうのだ。

そのため、選択種目、トレーニング強度、テクニックなどを定期的に入れ替えて、ワークアウトにバリエーションを持たせておく必要がある。

筋発達を継続させたいなら、ワークアウト内容を少しずつでかまわないので変化させよう。そのためにもいくつかのバリエーションを用意しておきたい。

では、具体的に何をどう変えたらいいのだろうか。

トレーニング量を操作する

ワークアウト・プログラムを作るには、まずは種目を選択する。そして、それぞれの種目のセット数やレップ数を決めていくわけだが、バリエーションを考えるときに、いちばん手っ取り早いのはこのセット数とレップ数を増減させることだ。

運動量を操作するだけで、筋肉への刺激は変化し、それがメタボリックダメージやメカニカルファティーグを促すことになる。

運動量の計算は、単純にレップ数×セット数から数値を求めることができる。種目毎にこの計算をし、最後にすべての数値を合算すれば、その日のワークアウト量が数値として出てくる。この数値を増減させれば、ワークアウト量を操作することができる。

確かにワークアウト量を増加させるには使用重量を減らす必要がある。高重量は筋力を伸ばすには非常に有効だが、筋肥大を最優先にするなら、高重量×低レップより、使用重量を少し落としてワークアウト量を増やしたほうが有効である場合が多い。ましてや全身の筋肉をまんべんなく発達させるなら、特定の部位のためだけに高重量を扱ってエネルギーの大半を消耗してしまうようなやり方は賢明とは言えないはずだ。

ニューヨークのプロフェッショナル・アスレチック・パフォーマンスセンターで運動競技コーチを務めるアヴァ・フィッツジェラード氏によると、運動強度を1RM(1回だけできる重量)の50~75%まで下げ、より多くのワークアウト量をこなすやり方は、筋力アップのワークアウトよりも確実に筋量増加をもたらすのだそうだ。実際、筋量を増やすことを最優先にしたワークアウトでは、1セットあたり20レップを行う場合もあるという。

このようにワークアウト量を増やすことは、筋力アップのためのプログラムに比べて、確実に筋量を増やす結果をもたらすと考えられている。この点はぜひ覚えておいてほしい。

ネガティブ動作を強調する

ウエイトトレーニングの種目では、ウエイトを持ち上げて下ろす動作を繰り返す。この業界ではウエイトを持ち上げる動作をポジティブ、下ろす動作をネガティブと呼んでいる。

ポジティブとネガティブを比較すると、ポジティブのほうが運動としては難しい。これは試してみればわかることだが、例えばスクワットでは、立ち上がる動作よりも、しゃがんでいく動作のほうが楽に感じられるはずだ。しかし、筋肥大を優先して考える場合、ネガティブ動作を重点的に行ったほうが効果が上がりやすい。

一般的にウエイトを上げることができなくなっても、下ろす動作はまだ続けられるわけで、ネガティブ動作を意識的にゆっくり行うだけでも種目の難易度を上げることができるはずだ。

あるいは、通常どおりのスピードでレップスをこなし、ウエイトを上げられない状態になったら、パートナーに手伝ってもらってウエイトをトップまで持ち上げ、自力で下ろす動作だけを行うやり方もある。これなら、持ち上げる力が尽きても下ろす動作だけを繰り返し、自力でウエイトを下ろす動作がコントロールできなくなるまで対象筋を追い込むことができる。

どうしてネガティブはポジティブより楽に行えるのか。それは、私たちの筋肉が下ろす動作を得意としているからだ。下ろす動作が得意なので、下ろす動作の時だけウエイトを重くしたいところだが、動作の途中で重量を変えることはできない。そこで、下ろす動作を意識的にゆっくり行ったり、パートナーに手伝ってもらって下ろす動作だけを行ったりして難易度を高める工夫が必要になるのだ。

なお、下ろす動作だけを繰り返すやり方では8~10レップスを目安にする。また、必ず最後の1レップまで自力で行うようにすること。つまり、真の限界のほんの少し手前でセットを終えるようにしたい。

何度も繰り返すが、筋肥大を促すにはワークアウト量を増やす必要がある。ネガティブ動作だけであっても無理な高重量を扱おうとせず、8~10レップスが行える重量を選択しよう。

セット間の休憩を制限する

筋肥大を優先するなら、筋肉にはできるだけ強烈なダメージを与え、筋肉を傷つけたあとは栄養と休養をしっかり与える。これが筋発達反応を起こし、発達を継続させることになるのだ。

筋肉に強烈なダメージを与えるトレーニングテクニックは数多くあるが、セット間の休憩時間を短く制限するだけでも、筋肥大を促す条件を満たすことができる。

例えばセット間の休憩を60~90秒に制限してみる。短い休憩時間で次のセットを開始すると、テストステロンや成長ホルモンをより早く分泌させることができるとされている。これらのホルモンはアナボリックホルモンであり、筋肥大には欠かせないのだ。

ドロップセット法を組み込む

ドロップセット法も筋肉を追い込んで、筋疲労をしっかり得るために用いられるテクニックのひとつだ。特に筋肥大を目指すボディビルトレーニングでは、ドロップセット法は多くのボディビルダーに愛用されてきた。

ただし、注意しておくべきことは、このテクニックは頻繁に使わないほうがいいということだ。ドロップセット法は運動強度を著しく高めるため、やり過ぎると中枢神経が疲労してしまう。そうなると全身の疲労感がなかなか抜けなくなり、長期の休みが必要になることもあるのだ。

これはドロップセット法に限ったことではなく、強度を高めるテクニックを採用する際は用いる頻度に気をつけたほうがいいだろう。

ドロップセット法に関していえば、行う頻度は月に1回程度で十分だ。あるいは6~8週間ごとに1回行うだけでもいい。むしろ低頻度で行うことで、このテクニックの効果を最大限に引き出すことができる。

ドロップセットのやり方だが、まずは選択した種目をいつもどおりに限界まで行う。限界が来たら使用重量を25%ほど減らしてすぐに動作を再開する。再び限界が来たら、さらに重量を25%減らして動作を再開する。こうして対象筋を限界まで追い込んでいく。

例えば20kgのダンベルでトライセップス・エクステンションを開始する。目標の10レップあたりで限界が来たら15㎏のダンベルに持ち替えて、休まずにレップを続ける。さらに限界が来たら10kgのダンベルに持ち替えて限界レップまで行ってセットを終える。

注意点としては、ドロップセット法を行った後は十分な休養を取り、疲労回復を促すことを最優先すること。また、ドロップセット法で使用重量を減らしながらレップを続けていくと、疲労によってフォームが崩れてしまう傾向があるので注意が必要だ。

ドロップセット法を行うならアイソレーション系種目がおすすめだ。もし多関節種目でドロップセットを行う場合は、ひとりだと大けがを負う危険性が高まるということを忘れないように。ドロップセット法を行う際は、補助者に付いてもらうようにしよう。

多関節種目を盛り込む

全身の筋肉をまんべんなく発達させたいなら、多関節種目をワークアウトに盛り込むことは必須だ。多関節種目がどうして有効なのか。それは、多関節種目によって体内のホルモンの反応を活発にすることができるからだ。

つまり、多関節種目は一度に複数の筋肉を刺激するだけでなく、テストステロンや成長ホルモンなどのアナボリックホルモンの働きを活性化するため、筋発達しやすい体内環境を作ることができるのだ。

多関節種目では複数の関節が動く。だからひとつの種目で複数の部位を刺激することができる。そういう意味ではとても効率がいいと言える。

例えばスクワットは多関節種目の代表格だが、スクワットよって刺激を受ける筋肉は大腿四頭筋、殿筋、カーフなどだ。これだけ広範囲の筋肉をひとつの種目で刺激することができるので、トレーニング時間に制限がある人にとっては特に有用と言えるはずだ。

代表的な多関節種目としてスクワット以外にもベンチプレス、デッドリフトがある。これら3種目は「ビッグリフト」とも呼ばれていて、昔から多くのアスリートたちに行われてきた。

この「ビッグリフト」3種目を普段のワークアウトにぜひ取り入れてほしい。例えば次のように組み込むといいだろう。

■月曜日:月曜日のワークアウトにスクワットとベンチプレスを組み込む
■火曜日:オフ日
■水曜日:水曜日のワークアウトにデッドリフトを組み込む
■木曜日:オフ日
■金曜日:金曜日のワークアウトにスクワットとベンチプレスを組み込む
■土曜日:オフ日
■日曜日:オフ日
※スクワットとベンチプレスは週2回、同じ日に行う。 ※デッドリフトは週1回の頻度で行う。

オフ日は何をする?

先の例のようにトレーニングを週3回行うとしたら、オフ日は何もしなくていいのだろうか? 何かしてないと何だか落ち着かない……そういう人もいるだろう。

トレーニングが休みの日はしっかり休養を取って、疲労した筋肉を休ませたほうがいい。あるいは、軽い運動を行うことで血流が活発になって疲労物質が押し流され、疲労回復が促せるという考え方もあるので試してみてもいいだろう。その場合、特定の競技を行っているアスリートなら、ウエイトトレーニングが休みの日に格闘技の練習をしたり、サーフィンをしている人なら海に出かけてもいいだろう。あるいはヨガをやったりするのもいい。

このようにワークアウトがオフの日に体を動かす場合は、ウエイトトレーニング以外のことをして心身をリラックスさせることを心がけよう。

多関節種目を盛り込んだワークアウトは、想像以上に全身を疲労させる。しかし、適切な頻度、適切な量で行うと、筋肉同士の連動性が高まり、心拍数を上げ、柔軟性を高め、より効率よく筋肉への刺激を得ることができるようになる。

全身の筋肉をまんべんなく発達させたいなら多関節種目を取り入れ、トレーニング量の多いスケジュールを組むようにするといいだろう。

◀トップページに戻る

トレーニング関連の記事

 

ピックアップ記事

関連記事一覧