腕が長くなる「プッシュアップ」!?ベンチプレスとの違いや機能性を解説

筋肥大を目的とする場合、ホームトレーニー以外でプッシュアップを行う人は少ないのではないでしょうか? プッシュアップは体重の半分の重量が負荷になります。つまり体重が70㎏の人であれば約35㎏の負荷のベンチプレスを行うことと同じになります。つまり、ベンチプレスで40㎏以上を扱える場合、今以上の筋肥大を目的とするならば、もはやプッシュアップを行う必要はないとも言えます。しかし、プッシュアップにはベンチプレスより優れている点もあります。それはベンチプレスより「機能的」であるということです。この理由からスポーツアスリートはプッシュアップを積極的にトレーニングに導入する傾向にあります。その理由とは、動作を行うときに体幹の筋肉(ここでは一般的にコアと呼ばれる腹筋群や背筋群の筋のことを言う)が正しく機能しないと動作を行えないという性質があるからです。

なぜアスリートは好んでプッシュアップを行うのか?

プッシュアップやスクワット、懸垂などのCKC(クローズドキネティックチェーン)と呼ばれる、主に自体重を負荷にする種目は、体重を負荷にしないOKC(オープンキネティックチェーン)の種目より体幹の筋肉がより多く動員されるという特徴があります。
例を挙げると、レッグエクステンション(OKC)よりスクワット(CKC)、ベンチプレス(OKC)よりプッシュアップ(CKC)、プルダウン(OKC)よりプルアップ(CKC)が、より体幹の筋肉が動員されやすいということがイメージでもご理解いただけると思います。
そもそも人間の基本の動きは体幹の筋肉が優先的に動くようにできているので(フィードフォワード機能)、CKCエクササイズがより人間が本来行う自然な動きであると言えます。また、人間の基本的な動きは自身の身体の重心を移動させる(歩く、走る、立ち上がる)ことなので、体幹がベンチに固定されていて重心が移動しないベンチプレスより、重心が上下に移動するプッシュアップの方がその性質からも、より人間本来の動きに近いとも言えます。
そのようなことから、プッシュアップは筋肥大や筋力アップではなく、機能性を高めることに重点をおいてエクササイズを行う必要があります。したがって、正しく身体の機能を理解した上でエクササイズを行うと、よりその効果を発揮します。

プッシュアップでよく見られる間違ったフォームは「肩甲骨を寄せる」というフォームです。これは肩甲骨を固定する『前鋸筋』という筋肉が使えていないことが原因です。この状態では上腕骨頭を支えている受け皿(簡単にいうと肩関節)が、力の方向から横に外れて向いてしまい、肩関節が脱臼する方向に力がかかってしまいます。その結果、脱臼を防ぐための身体の防衛反応が起こり、肩周りの筋肉を固定して動かなくなることにより、肩が硬くなる、もしくは肩を痛める原因となってしまいます。プッシュアップを行う際に肩甲骨が寄ってしまい固定ができない場合、その前段階として、前鋸筋を使えるようにする(活性化する)必要があります。前鋸筋は肩甲骨と肋骨を繋いでいて、その働きは主に肩甲骨を固定したり動かしたりすることです。前鋸筋の活性を目的としたエクササイズに『スキャプラ(肩甲骨)プッシュアップ』という種目があり、このエクササイズを行うことによりプッシュアップで肩甲骨が寄ることなく、効果的にエクササイズを行えるようになるばかりか、ベンチプレスにおいても、肩が安定することで、ケガを予防する、肩関節の可動域を高めるなどの効果も期待できます。


それではスキャプラプッシュアップの行い方を説明します。最初に四つん這いになり正中線に片手をついたトライポットと呼ばれる姿勢をとります。そのまま、肘を曲げないように、動作をゆっくりコントロールしながら肩甲骨を寄せたり、広げたりします。

意識するのは脇の下前方の筋肉です。もし正しく前鋸筋が活性できたなら、両手を上げた際に活性化した方の肩の可動域が上がり、腕が長くなります。この運動は、プッシュアップの前だけでなく、ベンチプレスで肩を痛めがちなトレーニーにも必要な運動であると言えます。前鋸筋は赤ちゃんが生まれてから最初に使う上半身の筋肉です。赤ちゃんは最初の段階でハイハイをすることで大胸筋や上腕三頭筋よりも先に前鋸筋を使うことを覚えます。大人はハイハイの動きを忘れてしまうことで前鋸筋が使えなくなり、肩の不調を訴えます。大胸筋を鍛える前に前鋸筋を使うことは、全てのトレーニングを効果的に、安全に行うためにはとても必要なことなのです。


著者プロフィール
井上大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/NSCACSCS/NPO法人JFTA理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF全日本ボディビルディング選手権6位。

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