今回取材したのは、昨年の世界女子フィットネス選手権ビキニフィットネス、ジュニア160㎝以下級で銅メダルに輝いた国田海月選手。国田選手の母は元ボディビル選手として活躍していたことあり、もともと陸上競技に汗を流していた国田選手も影響を受けボディメイク競技にのめり込んでいった。そして国田選手は、今では陸上競技で培ってきた筋肉を武器に、若さ溢れるフレッシュな姿をステージで見せている。
【写真】若さ溢れる表情と筋肉の発達した下半身、華麗なポージングで世界に挑んだ国田選手
国田選手は小学校から高校卒業までの間、陸上競技(中距離走)に打ち込んでいた。また、当時母はボディビルをしていたこともあり、国田選手も陸上競技の補強トレーニングのため中学2年生からジム通いを始めた。
陸上部を引退し、ビキニフィットネスのためのボディメイクトレーニングを始めたのは大学1年生のとき。
「『背が高くすらっとして細いスタイル』が羨ましく、自分のスタイルがコンプレックスでした。当時の私は、陸上のために培ってきた筋肉を隠したい、無くしたい、と必死だったんです。でも、ビキニフィットネスという競技があることを知り、自分のコンプレックスを強みに変えられる競技ではないかと思ったことからボディメイクを始めました」
ボディメイクのトレーニングを始めた当時は、下半身の筋肉に対して上半身の筋量が少なく、バランスの悪いメリハリのない身体つきをしていたという。ビキニフィットネスらしい身体作りを目指してトレーニングをやってきたことにより、現在は下半身に対して上半身の筋量がようやく追い付きつつあるという。
「この競技と出会ってから、身体面だけではなく『精神面』も鍛えられました。この競技をしていると減量期があり、大会間近になると何事にも繊細になる時期があります。例えば、女性ならではのホルモンバランスの乱れによって心身共に辛くなること。ビキニフィットネスを始めた当初は、他の選手とのコンディションと自分の違いを比べてしまうことも。仕上がらない私自身の身体に落ち込み、嫌になることが多々ありました。現在は、そのようなときでも『そんな時期があっても当たり前だよ』と、どんな自分にも向き合えるようになりました。以前は、意図的に感情をコントロールしようとして苦しみましたが、現在はどのような状況におかれても平常心で過ごせるようになり、それがこの競技を始めて感じた大きな心境の変化だと思います」
長い減量期間でも、自分で自然に感情をコントロールし、どれだけ穏やかに過ごすことができるか、それが大切だと話す。
昨年は初めて世界選手権を経験。国田選手は自身の背中に課題を感じた。世界のトップ選手の身体がどのようなものであるか、今の自分と世界にはどこに大きな違いがあるのか? それは背中からウエストにかけてのVシェイプが大きな差の一つだという。
「昨年のオフシーズンからは、背中のトレーニング頻度も増やしました。また、具体的にどこの筋肉にアプローチをかけるかなど細かな部位を意識し、課題点を一つでも改善できるような取り組みをしています」
国田選手は平日、トレーニング時間を十分に確保できないこともある。その日に行う部位を確実に狙えるよう、特にトレーニングフォームにはこだわっているという。高重量ばかりではなく、わざとトレーニングフォームが絶対に崩れない重量での高レップでセット数を多く組むこともよくあるとか。
インターバル中にはビキニフィットネスでの評価に関わる箇所に着目しつつ、その日の部位を意識したポージング練習を常に行っている。
「ステージでのしなやかさ、柔軟性も課題であると世界選手権を通して学びました。昨シーズンを終えた後から、週1回のバレエレッスンに通い始めました。これまで知識の無かった面にも、今年は目を向けて取り組んでいます。それだけではなく、昨シーズンは睡眠時間が4時間になる日々が続き、体力的にも疲労が酷く改善する必要がありました。できるだけ睡眠時間を確保するため、生活の中で削るところは削る。費やすべきところに時間を掛けるようにジムの場所、食事時間など仕事以外の1日のスケジュールを変更して取り組んでおります」
最近の国田選手は空いた時間を有効活用していく取り組みを行っている。例えば昼休憩を見れば、会社からジム間の移動時間は往復で20分。ジムでのトレーニングや有酸素は30〜35分、最後に昼食は5分。
食事時間を削った昼休憩に、これまで夜に行っていたトレーニングメニューの一部を充てることで、睡眠時間の改善を図っている。
最後に国田選手の今年や今後の目標について尋ねた。
「オールジャパン158cm以下級で優勝することです。2022年は、夢に見ていた世界選手権へ出場させていただき貴重な経験をさせていただきました。自分の目で世界基準を勉強してきましたので、一般クラスになる今シーズンもきちんと成績を残し、また日本代表として国際大会へ派遣していただけるよう精進します」
ジュニアクラスから一般クラスに上がった国田選手。新しいアプローチも加え進化をしていく国田選手は今年、オールジャパンでの活躍は間違いない。
取材:FITNESS LOVE編集部 撮影:中島康介
【写真】若さ溢れる表情と筋肉の発達した下半身、華麗なポージングで世界に挑んだ国田選手