「乳酸は疲労物質」はもう古い

加圧トレーニング®のメカニズムを理解する上で外せないキーワードで、代表的なのが「成長ホルモン」と「乳酸」。今回は特に「乳酸」に焦点を当てて加圧トレーニング®の有効性をご紹介します。

文:Woman’sSHAPE編集部

「乳酸は疲労物質」はもう古い

加圧状態で運動動作、すなわち筋収縮運動を続けると、急激に血中乳酸濃度が増加します。逆に加圧状態をオフにする(除圧)と乳酸濃度は下がりますが、再度加圧して筋収縮の動作に入ると、右肩上がりで乳酸が増えていきます。
ある特定の実験にて加圧中の乳酸濃度最高値は33ng/mlですが、この値は加圧なしの通常のトレーニングではそう簡単に出せるものではありません。この値までくると、脳の意思に反して筋収縮ができない「オールアウト」まで追い込まれた状態になります。最大筋力の20%程度の軽負荷で、しかもわずか15分の筋収縮運動でこれだけ高濃度の乳酸値が検出されることは、運動生理学のさまざまな測定実験でも類を見ない結果だと考えられます。

ところで、皆さんは「乳酸」についてどんなイメージを持っていますか? ポジティブなイメージを持つ人はかなり少数派ではないでしょうか。というのも、100年近く前、ノーベル賞を受賞した欧州の生化学者らの研究論文により、「乳酸=疲労物質」という理論が唱えられました。この理論がほんの10数年前まで基礎知識として定着していたのです。しかし、最近ではこの説を覆す研究成果が次々と発表されています。これまで、乳酸といえば私たちを疲れさせる厄介者扱いされてきましたが、実は乳酸は老廃物などではなく、運動中も運動後も使われており、「乳酸の蓄積」と「疲労」の間には直接的な相関関係はないという考え方が主流になってきているのです。また、筋肉痛の原因については「乳酸が筋肉に溜まって神経を刺激する」という説が長く信じられてきました。これも、現在においては「乳酸は体の中で消費されるため、筋肉中には残ることはない。したがって、運動の数日後に発症する筋肉痛についても乳酸が関係する可能性はほぼない」と言われています。

頼りになる友達!

乳酸は、むしろ私たちの運動をより良質なものにしてくれるという研究結果もあります。ある研究者グループによると、乳酸が蓄積して筋肉の酸性度が高まっていくと、疲労に伴う筋肉細胞外の正電荷が高まるのを抑えるようになり、その結果、筋肉の収縮運動をキープできることが確認されています。この研究結果から言えるのは、「乳酸があったほうが、筋肉はより長い時間収縮できる」ということ。これに関連して、日本の疲労研究の第一人者である大阪市立大学の渡辺恭良教授も、国際シンポジウムの中で「乳酸は脳の神経細胞の栄養源にもなっており、疲労の原因どころか回復の味方」と述べられているそうです。この説を裏付けるような実際の実験もあります。ねずみに運動前に乳酸を与え、与えない場合と比較したところ、運動時間に全く差がなかったことが示されました。私たちが運動をしている間、乳酸はさまざまな働きをしています。例えば、筋肉疲労につながる高いカリウムレベルを打ち消すのを助けますし、乳酸が分泌されることで成長ホルモンも分泌されるので、「代謝の促進」というメリットもあります。

運動生理学を研究するJasonKarp,MS(ジェイソン・カープ、修士)も自身の講義の中で、「乳酸は疲労の原因として関係がないが、そればかりでなく心臓を動かす唯一のエネルギー源である糖が体内で足りなくなった時に代用として使われたり、肝臓で新しいグルコース(ブドウ糖)に変えられたりもする。『乳酸は体に悪い』という従来のイメージを取り去り、頼りになる自分の友達だと思った方がよい」と説いています。

乳酸が疲労の原因でないとすれば、真の原因物質は一体何か? この疑問についても、最新の研究成果により解き明かされようとしています。見つかったのは「ファティーグ・ファクター(FF=疲労因子)」と呼ばれるタンパク質です。運動などにより細胞が傷つき、体内のFFが増えていくと、FFの働きを抑えて傷ついた細胞を修復する疲労回復物質「(ファティーグ・リカバー・ファクター(FR)」が現れます。FRはFFの増加に反応して増えますが、修復が追いつかなければFFのほうが増えて「疲労」を感じてしまう。しかし、しだいにFRの増加が進んでFFより優位になっていくと、疲労回復も進む。これが、「疲労」と「疲労回復」のメカニズムだと言われています。

乳酸の有効活用で
スピードも持久力も諦めない!

さて、私たちにとって「ミラクルボディ」とはどんな肉体でしょうか。筋肉にはスピードをつかさどる「速筋線維」と、持久力の要となる「遅筋線維」の2種類があることは、皆さんご存知ですよね。とすれば、どちらにも偏ることなくスピードと持久力をMAXまで進化させた肉体こそ、ミラクルボディの理想形ではないでしょうか。

実は、乳酸というのはこの速筋と遅筋を行き来しており、その移動によってエネルギーに変わっています。最後にその仕組みについても少し解説してみましょう。まず、乳酸は「速筋」が収縮する時に生成されます。速筋でつくられたこの乳酸、実は遅筋に多く存在するミトコンドリアの〝餌〟になります。ミトコンドリアは乳酸を食べるがごとく消費して、遅筋の新たなエネルギー源となる。それが、私たちが運動する際の「持久力」になるわけです。以前、テレビでも紹介されていましたが、肉体の可能性を極限まで追求するトップアスリートや、サラブレッドなどの競走馬は乳酸の発生も多く、ミトコンドリアの数も多いそうです。ということは、速筋線維のスピードと遅筋線維の持久力を兼ね備えている、まさにミラクルボディの持ち主というわけです。

このように、乳酸が速筋と遅筋を移動しながら有効利用されるという理論は「乳酸シャトル」と呼ばれていて、現代の運動生理学の領域では有力な理論となっています。この乳酸シャトルのメカニズムは、トップアスリートでなくてもやり方によっては活用できそうです。例えば高齢者の場合、体力的に乳酸の大量発生は望めませんが、軽負荷でもOKの加圧トレーニングなら可能です。

加圧なしの軽負荷運動では、速筋の動員が少ないため大量の乳酸がつくられることはありませんが、加圧トレーニングでは、適正な血流制限状態をつくることで、遅筋の収縮が阻害されて短時間に速筋の収縮比率が高まります。速筋収縮時の糖分解により発生した乳酸が急激に蓄積されますので、加圧ベルトを締めている部位の血中乳酸濃度が瞬時に高まるのです。こうしたことからも、加圧トレーニングは、その効果を手軽に効率よく得られ、ミラクルボディへの近道となる、いわば“ミラクルトレーニング”と言えるかもしれません。


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