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50歳こそ筋トレを!アンチエイジングに効果的な筋肉メソッド

中高年のトレーニング人口は増えている。彼らの目的は、アンチエイジング、健康、競技能力の向上など様々だ。ただ、残念なことに、若い頃に比べて筋肥大は難しくなり、逆に、筋喪失の勢いは増す一方だ。筋喪失の直接的な原因はひとつではなく、複数の要素が重なってもたらされることが示されている。つまり、その「複数の要素」が何であるかを突き止めることができれば、筋喪失を最小限に食い止めるために何をすればいいのかがわかってくるはずだ。加齢しても筋喪失が最小限に抑えられれば、私たちは60歳、70歳になっても「動ける肉体」を手に入れ、維持することができるのである。

文:Dr. Peter Cichonski 翻訳:ゴンズプロダクション

ケガ、非活動的、寝たきり

筋喪失を防ぐ5つの対処法

ケガや病気をすると、その間は普段より動けなくなってしまう。場合によっては、しばらく寝たきりの生活を強いられることもあるだろう。経験した人も多いだろうが、短い期間でも入院し、ようやく退院できたと思ったら、体重が激減していてがく然としてしまう。入院しないまでも、病気で自分のベッドからしばらく起き上がれなかったときなども同じだ。実際、わずか10日間であっても寝たきりの生活を続けると、それだけで筋肉量が7%も減少するという報告がある。たとえば80kgだった体重が、10日間の寝たきり生活で5.5kgも筋量を失うことになるのだ。これは心身ともに大きなダメージになる。

このようなダメージを避けるためには、日頃から適度な運動を行い、健康的な食生活を心がけ、できるだけ病気やケガを負わないようにするしかない。若ければ、今の生活のままで健康だし、支障はないと思うかもしれないが、動かずに過ごしたツケは必ずや中高年になってから回ってくるものなのだ。

長時間のデスクワークを仕事にしている人や、普段からあまり身体を動かさない人は、今からでも運動を取り入れたライフスタイルに切り替えていこう。もちろん、すでに病気で寝ているという人、骨折して動けないという場合でも、できることは山ほどある。たとえば、痛くない姿勢で、無理のない範囲で一定の姿勢を保ち、筋緊張状態を持続させるアイソメトリック運動を行うというのはいかがだろうか。それだけでも筋肉には負荷がかかり、筋喪失を予防することになるはずだ。

アナボリック耐性

若者と中高年の差のひとつにアナボリック耐性がある。アナボリック耐性とは、アナボリズムに対する耐性のことだ。中高年になると、アナボリックホルモンや運動、食事など、アナボリズムを高める要素に対する反応が鈍くなってしまうのである。

加齢に伴ってアナボリック耐性が高まるのを止める手段はない。それでも、耐性が高まるのをゆっくりにすることはできるはずだ。食事で言えば、何を食べればアナボリズムを高めるのに役立つのかといった知識を身に付け、優先的に食べる食材を決めておくようにする。

また、サプリメントも積極的に活用したい。体内に取り込まれたタンパク質が、できるだけ素早く血中のアミノ酸濃度を高めるように、必須アミノ酸やBCAAのサプリメントはぜひとも活用したい。必須アミノ酸は、筋発達の重要な役割を担っているのだが、体内で合成することができないので食物で補うしかない。そのため、サプリメントを活用するのが最も効率がいいと考えられるのである。

アナボリックホルモンの低下

人間には様々な機能が備わっているが、残念ながら加齢によって低下していくのが自然の摂理だ。当然、タンパク同化作用をもたらすテストステロンや成長ホルモンなど、わたしたちがアナボリックホルモンと呼んでいるものも分泌量が減っていく。テストステロンに関して言うと、30歳を過ぎた頃から年に1~3%の割合で分泌量が減少していき、平均すると10年ごとに14%も減ることが多くの研究で示されているのだそうだ。テストステロンの分泌量については、睡眠に大きく左右されるという実験結果がある。たとえば被験者の1日の睡眠時間を8時間から5時間に減らした実験では、わずか1週間でテストステロンのレベルが10~15%も減少したそうだ。

この実験結果を参考にするなら、テストステロンを減らさないようにするために、まずは8時間の睡眠を得られるように1日のスケジュールを調整し、眠るための環境を整えたい。言い換えれば、しっかり眠ることさえできれば、少なくともテストステロンの分泌量を減らす要素をひとつ解決できたということになる。

散々言われてきたことだが、ストレスを減らすことで、ストレスホルモンのコルチゾールを抑制することになる。コルチゾールはストレスホルモンとして知られているが、筋肉の分解を促す異化分解ホルモンでもあるのだ。異化分解ホルモンなので、同化ホルモンのテストステロンとは拮抗する。つまり、コルチゾールが高まればテストステロンは低下する。逆に、テストステロンが高まればコルチゾールは抑制される。そのため、できるだけコルチゾールを抑えた状態で日々を過ごしたいので、可能な限りストレスの少ない日常を過ごしたい。

仕事、家族、学校など、ストレスの原因は人によって様々だ。トレーニングですら身体に負担をかけるためストレスになる。といって、肉体改造を望むならトレーニングをしないわけにはいかない。そこで、トレーニング時間以外はできるだけストレスを抑え、食事についても気を配るようにしたい。例えば、飽和脂肪酸を多く含む食材を積極的に食べるようにしてほしい。

飽和脂肪酸?と思うかもしれないが、ホルモンは体内でコレステロールを原料にして作り出されていて、コレステロールの元になっているのは飽和脂肪酸なのだ。複数の研究で、飽和脂肪酸を多く含み、なおかつ食物繊維が少ない食事は、テストステロンの生成量を増加させるという実験結果が得られている。

もちろん、ここでいう飽和脂肪酸の食材については天然のものがよく、たとえば乳製品や赤身の肉、ココナッツオイルなどを積極的に食べるようにするといいだろう。また、亜鉛を高含有する食材にも目を向けてほしい。たとえば放牧で育てられた牛の肉、ヨーグルト、羊、カボチャの種、カシューナッツ、牡蠣、ひよこ豆には亜鉛が多く含まれている。これらの食材を使った料理は、成熟した筋肉作りに大いに役立つはずだ。

運動の種類に関して言うなら、有酸素運動を高強度と低強度で交互に繰り返すHIIT(ハイインテンシティ・インターバル・トレーニング)や、血流を制限するトレーニングなどが勧められる。これらのテクニックを用いた運動は関節への負担が軽く、ケガのリスクが少ないと考えられる。

慢性的な筋肉の炎症

筋喪失を防ぐ5つの対処法

年を重ねると、身体のあちらこちらに弱い炎症が起き、それが続くようになる。このような慢性的な炎症は筋肉にも起きるので、筋量減少や筋力低下につながってしまう。このような炎症の原因は運動だけでなく、インスリン耐性の増加や糖尿病、肥満などにもあり、できるだけこれらの病気や不具合を起こさないようにしたいところだ。

食パン、パスタ、菓子パンなど、精製された炭水化物から作られたものは極力避けるようにしたい。揚げものや糖分が多い飲料、そのほか多くの加工食品もできるだけ避けたほうがいいだろう。以下の食材は、炎症を予防したり、あるいは緩和したりしてくれるので積極的に食べるようにするといいだろう。

●緑色野菜(ホウレンソウやケールなど)
●ナッツ類(アーモンドやクルミ)
●脂の乗った魚(サーモン、サバ、ツナ、イワシなど)
●果物(イチゴ、ブルーベリー、サクランボ、オレンジなど)

神経系の能力低下

筋喪失を防ぐ5つの対処法

加齢によって神経系もまた、機能低下を起こし始める。神経系の機能低下とは、刺激や指令に対する反応が鈍くなることだ。例えば筋肉の場合、脳からの電気的な信号が神経系を伝って対象筋に送られ、その信号を受けることで筋肉が収縮する。ところが、老化すると収縮までの反応が鈍くなったり、電気刺激が十分に伝わらなくなり、筋肉が最大限の力を発揮できなくなる。

ここで必要なことは、神経経路をさび付かせないことだ。柔軟性を保ち、筋線維に傷を残したまま放置しないようにしたい。ヨガやストレッチ、フォームローラーを使ったマッサージなどを積極的に行おう。これらのケアを日ごろから行っておくことで、筋肉につながる神経の経路が整い、脳からの電気刺激が速やかに送られるようになる。

また、定期的に専門家やカイロプラクターによる全身マッサージを受けるとなおいいだろう。これは決して贅沢なことではなく、健康と若々しさを維持するためのケア療法だと理解しよう。

年齢を重ねると、神経系の効率が悪くなり、筋肉の質が低下し、アナボリックホルモンの分泌が減少する。また、体内ではあちこちに慢性的な炎症が起き、アナボリズムに対する耐性も高まってしまう。これらのことは全て筋発達に不利になり、筋喪失が起きやすい環境になってしまう。そのような体内環境が定着してしまうのをできるだけ避けるには、定期的に運動を行い、毎日自然光をたっぷり浴びて、栄養価の高い食事を食べ、十分な睡眠をとるようにすることだ。このようなライフスタイルは中高年の身体を健康に、快活に保ってくれる。そしてもちろん、そういう生活を送りながらウエイトトレーニングを続けることで、高齢になっても成熟した筋肉を維持できるようになるはずだ。

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参考文献
1.Michael McLeod et al. Biogerontology. 2016 Jun.
2.Advances in Nutrition, Volume 6, Issue 4, July 2015, Pages 452?460,https://doi.org/10.3945/an.115.008367 Published: 07 July 2015
3.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6878603/
4.Protein intake and exercise for optimal muscle function with aging: recommendations from the ESPEN Expert Group. Clin Nutr (Edinburgh) 33: 929?936, 2014.PubMed
5.Vitale et al., 2016
6.Fan et al., 2016)


執筆者:ピーター・シチョンスキー
PNBAプロナチュラルボディビルダーで、カリフォルニア州で開業しているカイロプラクター。30年間にわたり健康を最適化するために何を行うべきかを研究してきた。


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