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デッドリフトを筋トレメニューに加えるべき理由と正しいやり方

デッドリフトは重量ではなくフォーム重視

デッドリフトの効果を最大限に得るには、正しく動作を行うことが不可欠だ。見た目には床に置かれたバーベルを握って立ち上がるだけのシンプルな動作に見えるが、スタートからフィニッシュまでの動作の中には注意すべき点がたくさんある。決して見た目ほど簡単ではないのだ。当然のことながら、正しいフォームでの基礎筋力を十分に養わないうちに、いきなり130kgのバーベルをデッドリフトすることなどできないのである。

デッドリフトの効果を理解し、しっかり取り組もうと思うなら、まずは軽い重量を使って正しいフォームを徹底的にマスターすること。見た目は正しくできているように見えても、肝心なのは感じ方だ。少しでも体のどこかに違和感があるような場合は、正しい軌道でウエイトが挙げられていない。効果を得るだけでなく、ケガを予防する目的でもデッドリフトでは徹底的に「正しいやり方」を追求しよう。実際に正しいデッドリフトがどのようなものかを解説していく。

正しいデッドリフトのやり方:持ち上げる動作

①バーベルプレートはラバーつきのオリンピックプレートがいい。オリンピックプレートは万が一床に落としてしまっても床を傷つけにくい。ジムにラバープレートがない場合は、必ずマットを敷くことを勧めたい。
②バーベルの用意ができたら、バーを床に置き、できるだけバーの近くに立つ。肩幅より少し狭めに両足を開く。バーが足の甲の真上にくるように立つ位置を調整する(足の中央くらいの位置にバーがくるようにする)。
③股関節を屈曲させ、膝を軽く曲げ、上体を前屈させる。バーを握る際は、手のひらを手前に向けたオーバーグリップでもいいし、片方の手のひらを手前に、もう片方を前方に向けたオルターネイトグリップでもかまわない。握力にまだ自信がないという人は後者を選択するといいだろう。デッドリフトで十分に全身の筋肉を刺激していないうちに、握力が限界を迎えてセットを終えざるを得ないという状況は避けたいので、どのタイプのグリップでやるかを決めるのは大切なことである。
④握るバーの位置はスネの外側だ。バーを握ったら、肩がバーの真上に来るようにする。こうすることで動作を開始したときに、バーをできるだけ体に近づけた状態に保つことができる。背中は平らに保ち、顔を上げ、脊柱は自然な角度で保たれるようにする。
⑤正しい姿勢をつくってバーを握ったら、腰を後方に押し出して腹筋をギュッと緊張させる。肩は常に引き下げておく。広背筋を緊張させ、できるだけ胸を前に突き出すようにする。
⑥背中は常に平らに保ち、丸めたり反らしたりしない。上体を立てていき、体を後方に倒すように意識する。かかとに重心を乗せよう。脇を締め、肘関節をロックさせ、バーベルの重さをしっかり体に感じること。
⑦ウエイトを持ち上げるにつれて股関節と肩関節は同時に上方に動く。肩だけを先に動かしたりしないこと。
⑧デッドリフトのフィニッシュポジションは動作の中で最も重要な部分である。体がまっすぐに伸びたら腰を前に突き出す。ちょうど体の正面に保持しているバーを前に押し込むようなイメージだ。といって、体をエビ反りにするわけではない。あくまでもそういうイメージでトップポジションをつくり、腹筋と殿筋をギュッと緊張させる。また、トップポジションでは骨盤をまっすぐに立て、自然な状態をつくること。肩は後方に引いておこう。そうしてから全身の筋肉を再度緊張させる。
正しいデッドリフトの動作をマスターするまでは、軽い重量を使って何度も丁寧に繰り返そう。トップでは必ず股関節も伸展させ、殿筋と胴部の筋肉を収縮させることで下背部のケガを防止することができる。

正しいデッドリフトのやり方:下ろす動作

①デッドリフトで正しくバーを持ち上げたら、下ろす動作も正しく慎重に行う必要がある。基本的には上げたときと同じ軌道でバーを下ろしていく。
②股関節を屈曲させはじめた時点では膝はまだロックさせておき、ウエイトを床に下ろすと言うより、床に押し込むように意識しよう。
③いかなる地点でもウエイトはできるだけ体に近づけておく。
④ウエイトを下ろすときも全身の筋肉をギュッと緊張させておく。緊張が緩むとウエイトに引っ張られた動作になってしまう。これは絶対に避けなければならない。
⑤バーが膝の高さにまできたら膝関節のロックを解除し、膝を軽く曲げる。こうすることで、スネとバーを近づけた状態に保ちながら、ボトムポジションまでしっかりウエイトを下ろしていくことができる。
⑥スタート時と同じように、足の中央(足の甲)にバーが来るように下ろす。完全にバーベルを床に下ろしてから次のレップを開始する。
⑦次のレップを開始するときは、決して惰性でウエイトを上げ始めない。必ず最初のレップの開始時と同じように、正しくセットアップしてから動作を開始しよう。
⑧「ウエイトを床の行き止まり(デッドエンド)まで下ろす」だからデッドリフトと呼ばれている。ウエイトを下ろし切る前に次のレップを開始するやり方はデッドリフトではないということは覚えておこう。
⑨理想から言うと、次のレップを開始する前に2秒程度の休みを入れるようにしたい。こうすることで反動を一切使わず、常に「最初のレップ」と同じように慎重なやり方で行うことができる。また、ウエイトをいったん床に下ろしてから次のレップを開始することで、正確なフォームで動作を繰り返すことができる。ウエイトを下ろさずに次のレップを開始すると、軌道が狂ったり、動作が雑になったりしてケガの原因をつくることになるので注意しよう。

デッドリフトでの呼吸

デッドリフト中に意識を失って倒れてしまったトレーニーの動画を見たことはないだろうか。そんなことはめったにないと思うかもしれないが、実際、こういうケースは決して少なくはない。なぜこのような事故が起こるのか。それは、デッドリフトの際に呼吸を止めてしまうからだ。呼吸は決して止めてはならない。

呼吸を続けることはデッドリフトに限らずあらゆる種目で「必須」の要素である。デッドリフトに関して言うなら、呼吸を続けることで出力レベルを高め、特にウエイトを持ち上げるときに重要になってくる。

軽い重量でフォームをマスターしている段階から、必ず一定のリズムで呼吸を続けることを意識しよう。軽い重量で正しい動作を意識しながら、呼吸を続けるように習慣づけることで、使用重量が重くなっても息を止めることはなくなるはずだ。どうしても呼吸を止めてしまいがちだという人は、軽い重量でのデッドリフトをやりながら以下の事柄に注意してみよう。

●動作を開始する前に大きく深呼吸して、意識してたくさんの息を吸い込む。
●動作を開始し、ウエイトが全可動域の4分の1の高さにくるまでは息を止めておく。
●その後、トップポジションまでバーを引き上げながら少しずつ息を吐き続ける。
●トップでは残っている息を全部吐き切る。
●ウエイトを下ろし始める前にトップポジションでまずは息を大きく吸い、吐きながらウエイトを下ろしていく。
●これをレップごとに繰り返して習慣づけるようにしよう。

デッドリフトの頻度

筋肥大のためにデッドリフトを行うなら、最初のうちは最低でも週1回はワークアウトに組み込みたい。トレーニング歴が長くなり上級者になってきたら、デッドリフトを週2回の頻度でやるようにしよう。

ワークアウトのたびにデッドリフトを行う人もいるようだが、肉体改造が目的なら背中のワークアウトの日、もしくは背中を含む部位のワークアウト日にデッドリフトを行うようにするといいだろう。

なぜ背中のワークアウト日にデッドリフトをやるのがいいのか。確かにデッドリフトは全身を効率よく刺激する優れた種目だが、背中の筋力向上にとても大きな効果を発揮してくれるのだ。そして、あまり勧められないのは脚のワークアウト日にデッドリフトを組み込むことである。脚の種目では高重量が用いられることが多いため、その中にデッドリフトを組み込んでしまうと体への負担が大きくなり過ぎると考えられるからだ。

使用重量、レップ数、セット間の休憩など

高重量で行う種目は筋肉の深部にまで強い刺激をもたらし、筋肥大反応を促す。だからといって、筋発達を望むトレーニーが誰でも最初からいきなり高重量を扱えるわけではない。何でもそうだが、レベルアップには段階が必要であり、その段階をひとつずつクリアしていくうちに高重量を扱うことができるようになるのである。

デッドリフトに限らずどんな種目についても言えることだが、初級者のうちはレップ数を少しでも多くできるように計画を立てていこう。例えば、最初はセットあたり10~15レップをしっかり完遂できる重量を使って種目をスタートさせる。そんな軽い重量では筋量を増やすことなどできないと思うかもしれないが、このレップ数は筋肥大を積極的にもたらすレップ数なのだ。したがって、最初のうちは決めた重量で、できるだけたくさんのレップ数をこなすのではなく、10~15レップを最後まできっちりと行える重量を探してやってみよう。

セット間の休憩時間については、ボディビルの目的でデッドリフトを行うのであれば長く取り過ぎないようにすることだ。目安としては60秒間程度が適切である。

ボディビルダーがデッドリフトを行う目的は1RM(1レップだけできる最高重量)を伸ばすことではない。筋力も伸ばしていきたいが、それを最優先させる必要はないのだ。筋肉の深部にまできっちり刺激を送り、筋肥大のためのやり方で行うべきだ。そのためには比較的多めのレップ数で、セット間の休憩は短くしていく。使用重量は、上級者になってからでかまわないが、最後の2レップが特に苦しくなるような高重量を選択していくようにしよう。

全身種目なので、デッドリフトをワークアウトに組み込む場合は疲労回復のための休日も考慮する必要がある。特に週2回の頻度でデッドリフトをやる場合は、1回目のデッドリフトから2日以上空けて2回目を行い、疲労が溜まらないようにスケジュールを工夫しよう。例えば火曜日の背中の日に1回目のデッドリフトをやったら、どんなに早くても2回目のデッドリフトは金曜日まで待つことだ。

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