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【筋トレ1分コラム】ラットプルダウンのNGグリップとは?

ラットプルダウンでの実例も解説(撮影:北岡一浩)ゴールドジムアドバンストレーナーでボディビル世界チャンピオンの鈴木雅選手がトレーニングをひも解いていくIRONMAN誌の人気連載『トレーニングアップデート術』から、1分で読めるトレーニングワンポイント解説を紹介するこのコーナー。テーマはグリップ。「握り」に関する筋肉は屈筋(曲げるときに使う筋肉)、伸筋(伸ばすときに使う筋肉)ともに無数に存在します。今回は背中のトレーニングにおけるグリップについて解説していきます。

【写真解説】ラットプルダウンのNGグリップ例

バーベルやマシンの負荷をダイレクトに伝えられなければ、効率のいいトレーニングとは言えません。ただし、プレス運動ではいわゆる「乗せる」といった行為ができますが、背中のケースではそれがプルオーバー以外の種目では不可能です。そこで大事になってくるのが「グリップ」です。

背中のトレーニングのグリップについては、よく「指で握る」「指で引っ掛ける」といった声も耳にします。ですが、私個人的には背中のトレーニングで最もNG な行為は「指で握る」ことです。

まず指で握ると手首が背屈しやすくなり、手首・指といった部分に力が分散されがちになります。また動作の際には橈骨筋が収縮して肘が曲がり(肘関節の屈曲)、脇を閉じるフォームとなります。結果、肩甲骨があまり動かず、広背筋ではなく大円筋への刺激が強くなります。肘が曲がるため、上腕二頭筋の関与も大きくなります。

グリップは、手のひらの部分にある中手骨で握ります。握り方としては、手のひらでバーを「包み込む」(少しだけ手首が掌屈する)感じになります。そうすることで、不要な手首の動きが少なくなり、肘が曲がりづらくなり上腕二頭筋の関与が小さくなります。

また、上腕骨が外側に引っ張られるため、連動している肩甲骨が上方回旋しやすくなります。写真で紹介したストレッチを試してみると、指で握った場合と中手骨で握った場合の違いを体感しやすいかもしれません。中手骨で握った場合、肩甲骨が上方回旋・下方回旋しやすくなるため、広背筋がメインのターゲットとなります。

注意点としては、深く握り込まないこと。深く握り込むと肩甲骨が内転しにくく、広背筋、僧帽筋下部を収縮させづらくなります。

私の場合は、ラットプルダウンなどストレッチを優先したい種目では手首を固定できるパワーグリップ、ロウイングなど僧帽筋下部を収縮させたいときは手首の遊びが効くリストストラップを使うようにしています。

では手のひらのどこで握るか、そのポイントも大切です。小指側で握ると力学的な観点、筋膜のライン、骨の動きなどから、背中のアウトラインを形成している筋肉から動かしやすくなります。親指側で握ってしまうと、橈骨筋、上腕二頭筋といった筋肉が動きやすくなります。

しかし、親指を使わないという意図で親指を外したグリップ、いわゆるサムレスグリップでは指で握った場合と同じ動きになってしまいます。ストレッチにはよいかもしれませんが、収縮の際には橈骨筋が働き、肩甲骨が下方回旋しにくくなり、大円筋ばかりに効くことになります。

鈴木 雅(すずき・まさし)
1980年12月4日生まれ。福島県出身。身長167cm、体重80kg ~83kg。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2004年にボディビルコンテストに初出場。翌2005年、デビュー2年目にして東京選手権大会で優勝。2010年からJBBF日本選手権で優勝を重ね、2018年に9連覇を達成。2016年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2つの世界大会でも優勝を果たした。

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取材:藤本かずまさ 構成:FITNESS LOVE編集部 撮影:北岡一浩

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