2月13日(土)カルッツかわさきで開催されるマッスルゲート神奈川に「ベンチプレスチャレンジ」にベンチプレス世界チャンピオン鈴木佑輔選手が出場することが発表され、SNSなどで話題となっている。なぜ世界チャンピオンがマッスルゲート神奈川に出場するのか、その理由を聞いた。
取材:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩
――このたび、マッスルゲート神奈川「ベンチプレスチャレンジ」に参戦されることになりました。
鈴木 以前からマッスルゲートなどベンチプレスの非公式大会の存在は知ってはいたのですが、遠慮していた部分が多少なりともあったんです。
――自分が出ていいものなのかだろうか、という迷いがあった?
鈴木 そうです。以前、オッシュマンズの大会に出たことはあったんですが、そのときも賛否両論でした。
――なんで鈴木選手が出てくるんだと(苦笑)。
鈴木 はい(苦笑)。だから、非公式大会自体には興味があって、イベントとしても面白そうだと思っていたんですが、参加には二の足を踏んでいました。ただ、コロナ禍という状況下で、自分自身もそうですが、パワーリフティングをやってみたい、ベンチプレスの大会に出てみたいと思っている方が出場できる場がないという状況下で、マッスルゲートは選手にとって出場しやすい環境を整えていたり、イベントそのものに話題性があったりと、興味は持っていたんです。また、2月という時期も、自分にとってはちょうどいいんです。
――そうなんですね。
鈴木 例年ですと、1月か2月にジャパンクラシック、5月に世界選手権、9月にアジア選手権という流れがあるんです。その流れが去年と今年はなくなって、今年も無理だろうと思っていたところ、2月にマッスルゲート、6月にジャパンクラシックが開催されることになりました。これで例年と似た試合スケジュールになったんです。このタイミングで試合に出たら、自分を例年通りのルーティンにリセットできるんじゃないかと。
――ああ、なるほど。
鈴木 年齢的にも全試合で100パーセントの仕上がりを求めるのが難しくなってきたのですが、もちろん一番いいパフォーマンスを発揮したい試合は世界選手権です。ジャパンクラシックでは、その世界選手権の舞台に立つためのパフォーマンスをやりたい。2月にマッスルゲートに出ることでそうした感覚を自分の中で取り戻していければ、来年以降、また通常のルーティンに戻りやすくなるんじゃないかと思いました。
――つまり、今年は2月のマッスルゲートに、例年のジャパンクラシックのつもりで臨む?
鈴木 そうです。そして、これはあくまで予定なのですが、10月にカザフスタンで世界選手権が行われます。「2月、6月、10月」という流れが例年の「2月、5月、9月」という流れと似ているので。
――参戦の発表に驚いた人も多いと思います。
鈴木 すごく迷いました。ですが、去年も小林ナオコ選手が出場したり、そうした強い選手が出て大会が盛り上がるというのもあると思います。その流れに乗らせていただこうかなと(苦笑)。
――負けられないプレッシャーは?
鈴木 もちろん、100パーセントの状態ではないとは言え、緊張感は持っています。普段の大会とは違う環境での試技にもなりますから。ただ、(試合がないという)緊張感がなかった去年の状況よりも、やはり緊張感を持てる状況のほうがいいと思います。去年は、身体がちゃんと反応してくれないもどかしさがあったので。
――それは試合のルーティンが狂ったから?
鈴木 そうです。試合勘というか、オン、オフのタイミングが狂った状態でした。去年はずっとオフのままでした。やはり試合というものに対しての緊張感がないと、1発の出力を上げていこうと頭では考えてもいても、どうしても身体が甘い状態になってしまいますね。
――普段から練習をやっているにしても、試合が決まっているのと、決まっていないのとでは、かなり違います。
鈴木 そうなんです。練習で「追い込めている」「追い込めていない」ということではなく、追い込むにしてもメリハリが必要ですから。追い込む中でも「強弱」あると思うんです。試合がないと、その「追い込み(弱)」のところまでしかいけないでです。
――スイッチ半押し、みたいな状態?
鈴木 そうです、そうです(苦笑)。そこを、いい意味で打破して気持ちのスイッチをフルに押せれば。マッスルゲートでは世界大会より緊張するかもしれません。また、今回はワイドではないグリップでいこうと思っています。
――では、グリップはいわゆるナローでの試技になる?
鈴木 そうなると思います。限られた、ある意味不利な条件で、今のたるんだ気持ちから、いかに高めてパフォーマンスを発揮できるか。そこは実験ではあります。
――ワイドグリップよりも、ナローのほうが見た目の「挙げている感」はあります。
鈴木 玄人目線で見ると、最短挙上距離のテクニックも純粋に「すごいな」と思います。でも、マッスルゲートにこられるお客さんは玄人の方ばかりではないと思います。だから、ある程度分かりやすい試技をやりたいと思っています。
――ある意味、ベンチプレッサーの強さをアピールする場?
鈴木 そうですね。自分にとっても試合に出るにはいいタイミングですし、「ベンチプレス」という競技をアピールできる場もありますし。
――目標としている重量は?
鈴木 210kgを挙げられればうれしいです。
鈴木佑輔(すずき・ゆうすけ)
1984 年9月5日生まれ。茨城県守谷市出身。
身長169㎝、体重79.95kg。
2010年~2014年ジャパンクラシックベンチプレス選手権4連覇
2013年~2015年、2017〜2019年アジアクラシックベンチプレス選手権優勝
2018年~2019年世界クラシックベンチプレス優勝66㎏級ノーギアベンチプレス日本記録(190.5㎏)・アジア記録(175㎏)83㎏級元世界記録(216.5㎏)世界記録(211㎏)保持。公式大会の自己ベスト記録は222.5㎏。
トレーニング以外の趣味:釣り。「このジムの近くの川でトラウトフィッシングをやります。今はまだ禁漁なのですが、2月16 日から解禁になるんです」
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