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「楽観的になると意外と絞れる」日本ボディビル王者が語る減量とトレーニングの向き合い方

全国高校生ボディビル選手権3連覇を果たし、大学入学1年目には、いきなり全日本学生選手権大会を制した。そして昨年は約半世紀ぶりとなる若さで、日本ボディビル選手権に優勝した相澤隼人選手。2019年当時の科学と気合いの減量論を聴いた。(IRONMAN2019年8月号から引用)

取材:木村卓二 撮影:北岡一浩、藤本かずまさ(大会写真)、相澤隼人

「計画、良質のトレーニング、そしてメンタル」

――以前、20代前半はバルクアップを重視したいとおっしゃっていました。実際、2017年世界ジュニア出場してから高校卒業前の一時期、かなり大きくなっていました。
相澤 あのときは増やし過ぎました。柔道部を引退して、ウエイトトレーニングに専念するようになり、カロリー消費量が減ったことも原因の一つだと思います。加えて、減量明けで食欲が爆発したということもあります。意識して増やしたというより、気づいたら増えていたという感じです。あまりよくなかったですね。
――予想以上の増量だったのですね。何か影響はありましたか?
相澤 トレーニングの質が落ちました。その経験から、少しずつというわけでもないのですが、急激には増やし過ぎず、計画的に増やすということを心がけるようになりました。大会後の2カ月ぐらいまでは、継続してカロリー計算を行うようにしています。その時期、1日の摂取量は、4000キロカロリー未満ぐらいにとどめています。
――現在、オンとオフは、どのように分けていますか?
相澤 10月の大会終了から2月末までをオフとし、3月1日から減量に入りました。今年出場する最初の大会は、8月25日の東京選手権です。減量期間という意味では、5カ月間の設定となります。80㎏からスタートしたのですが、72㎏まで落とせれば、いいコンディションになると思っていますが、最終的にはもう少し落とすことになると思います。
――どのような段階を踏んで落としてきたか、教えてください。
相澤 今年は80㎏からのスタートですが、そのときの体重維持必要量が3500から3700キロカロリーぐらいでした。ひと月あたり1.5㎏から2㎏落とす計画を立て、1日の摂取カロリーを3300ぐらいに設定しました。約400キロカロリー節制する形です。減量していくと、代謝が落ちないということはないので、進めるのに合わせて摂取カロリーもある程度落とします。今は3000です。
――昨年はどうでしたか?
相澤 同じ感じでしたが、スタートが84㎏でしたので、全日本学生選手権まで14㎏絞りました。大会前の摂取カロリーは、1日2600キロカロリーでした。
――オンとオフで、食事は変えますか?
相澤 変えるのは、ご飯の量だけです。あと、お菓子を食べないようにします(笑)。1年間を通して、ベースは何も変わらないです。
――消費カロリーはいかがでしょう? トレーニングの量を増やしたりなどはしますか?
相澤 トレーニングでカロリー消費を狙うことはないです。あるとすれば有酸素運動です。3000キロカロリーに減らしたところから、有酸素運動を始めるという感じです。ウエイトトレーニングの後に、早歩き程度のペースで30分間トレッドミル、脈拍は計測せず、感覚でやっています。有酸素運動をやらない日は、2800にすることもありますが、あまりこだわらずにやろうと思っています。今までは極端で、有酸素を1日30分と決めたら、絶対に毎日やるという感じでした。ただ、昨年そうしてみたら、疲労が溜まってトレーニングの質が下がってしまったので、やり過ぎるのもよくないかなと思うようになりました。
――中学2年生から大会に出ていますが、現在19歳、まだ体が変化している年代かと思います。減量中、以前と現在で変化を感じることはありますか?
相澤 食事の量を増やしても、きちんと体重を減らせるようになったと思います。年齢による変化ではなく、単純に筋量が増えているからではないかと思います。
――これまで、減量で失敗したことはありますか?
相澤 高校1年生のときに経験しています。8月ごろでしたが、ケトジェニックなのか、単に炭水化物を食べなかっただけなのか何とも言えませんが、カーボをカットしました。当時の自分は、極端でした。やればやるだけよくなると思っていたので、例えば水抜きは3日間、塩抜きも1週間やっていました。柔道の大会前で、サウナスーツも着込んでいました。結果、精神的に参ってしまいました(笑)。全くよくないですよね。その後、高2からは、炭水化物を摂るようにしました。結果、いい感じにいけたので、自分の体には必須なのかなと思っています。今は、タンパク質の量は固定されているので、炭水化物の量で調整する。そういうやり方になっています。
――サプリメントは、オンとオフで変えますか?
相澤 最近カルニチンを摂り始めたぐらいで、基本的には何も変わらないです。通年で摂取しているのは、プロテイン、グルタミン、クレアチン、BCAA、ホエイペプチド、ビタミン類です。
――チートデーは設けていますか?
相澤 そうですねえ……。あってもいいとは思うのですが、チートしてもあまりいいものを得ないというか……。去年までチートしていたのですが、「今日しか食えないんだから、食えるだけ食っちゃおう」という感じになってしまい、翌日むくんだり、体調が悪くなったりしてしまうんです。そうすると、気持ち悪い状態でトレーニングするはめになります。ですので、やるなら炭水化物中心のハイカーボなどのほうが、理想的ではないかと思います。
――減量が停滞してきたときは、どうしていますか?
相澤 マサさん(鈴木雅選手)に相談しています。方法を教えていただくのですが、メンタル面でもいい刺激になります。ネット情報を拾ってくるのと、マサさんが言っていることでは、説得力が違いますから。トレーニングから離れて気分転換するなどの方法は、特にありません。
――減量を成功させるためのポイントは、多々あるかと思います。将来、トレーナー希望とのことですが、あえて何か一つだけアドバイスするとすれば、どんなことを伝えますか?

相澤 最後は気合い(笑)。減量は、気持ちの面で違ってくると思います。去年、関東学生選手権前の1週間と、そこから全日本学生選手権までの1週間で、食事の量など特に何も変えなかったのですが、気持ちが楽になって、体の質感がよくなりました。変わったのは、気持ちの部分だけだったにもかかわらず、好結果を得ました。「絞れていない」と思うと、悪循環に陥り、本当に絞れなくなります。逆に楽観的になるというか、そうすると意外とよくなったりすると思います。


あいざわ・はやと
1999年10月21日生まれ、神奈川県相模原市出身。
身長164㎝、体重75㎏(オン)85㎏(オフ)
トレーニングを先にしていた双子の兄の影響から12歳でトレーニングをはじめ、非常に向上心があり、勉強熱心
な性格と成長期が重なったこともあり、すさまじいスピードで成長が進行している若手No.1選手。若手と言いな
がらも、ボディビル歴10年というから驚きだ。
主な戦績:
2015~2017年 全国高校生選手権優勝
2017年 日本ジュニア選手権優勝 世界ジュニア選手権75㎏級5位
2018年 全日本学生選手権優勝
2019年 東京選手権優勝 日本クラス別選手権70㎏級4位 全日本学生選手権優勝 日本選手権9位
2021年 日本クラス別選手権80kg級優勝 日本選手権優勝


執筆者:木村卓二
TVディレクター、記者として活動。複数言語に通じ、「究極のトレーニング」を求め、研究と取材に勤しむ。有資格パーソナルトレーナーとして、格闘家などへの指導も行う。

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佐藤奈々子選手
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