筋発達を起こすには2つの要素が不可欠だ。ひとつは運動による筋肉への刺激、もうひとつは運動による疲労を完全に回復させることである。疲労が残ったまま次回のワークアウトを行えば、前回は挙上できた重量ができなくなり、そのうち体全体の筋肉が萎んだような不安に襲われるようになる。幸い、このようなストレスの累積は、行うワークアウトや摂取する食事を工夫することで解消することができる。
文:John Balik from Complete Cycle
翻訳:ゴンズプロダクション
ベンチプレスを行っていて、最後の1レップが行えなくなるのは出力に限界がくる。
そして、その限界は対象筋の細胞からやってくる。動作を繰り返すと、その動作1回を行うのに必要な出力を発揮するために筋肉を構成する細胞が働く。
働いた細胞が限界を迎えると、まだ刺激を受けていない新鮮な細胞がそれに取って代わる。新鮮な細胞がまだ十分に残っているうちはいいが、やがて元気な細胞がなくなると、出力が足りなくなり、動作が継続できなくなる。しかし、このようにして筋肉は発達するのだ。
つまり、元気な細胞が次々と刺激を受け、傷ついて疲労すると、細胞は同じようなダメージを受けないようにするために今までより強く、太く回復しようとする。つまり、筋発達に刺激は不可欠というわけだ。刺激なくして筋発達は起こりえないのである。
疲労について
動作を行うことで対象筋が細胞レベルで疲労していくわけだが、私たちが「疲労」というものを感じるのは、その部位に普段の状態とは違う反応が起きるためだ。
その反応とは、私たちが行う動作に起因している。すなわち、無酸素運動であるウエイトトレーニングによって、対象筋の中には猛烈なスピードで乳酸が蓄積していくのだが、その乳酸が筋肉に焼けるようなバーン感をもたらし、筋肉の収縮を継続させる力が徐々に奪われていくのだ。
無酸素運動ではあらかじめ貯蔵されていたATP(アデノシン三リン酸)が使われ、それが底をつくと、ADP(アデノシン二リン酸)がリン酸と結合してATPを再合成する。
しかし、やがてその再合成も行われなくなると、ついに動作の継続ができなくなる。ある意味、これは体が持つ防御システムのひとつといってもいい。エネルギーが枯渇しても、なお動作の継続が可能になってしまうと、それは確実に筋肉への大きなダメージとなってしまい、ケガの原因になり得るからだ。疲労が感じられ、動作の継続が困難になってきたら、もうエネルギーがなくなってきたのでセットを終了しなさいという合図である。
疲労が筋発達をもたらす
短い休憩を取っている間に、筋肉は枯渇したエネルギー源をできるだけ増やそうとする。休憩中に少しでも多くのエネルギー源を確保することで、次のセットも限界まで追い込むことができるのだ。
ただし、セット数が増えれば、徐々に行えるレップ数は減少していくはずだ。その理由は、休憩中に補えるエネルギー源が徐々に減少していくからだ。
逆に、セット間休憩を1分間挟んで、1セット目と2セット目において同じ重量で同じレップ数ができたとしたら、そもそも1セット目で対象筋が限界まで追い込まれていなかったことを意味する。疲労するまで筋肉を刺激することは筋発達に不可欠なことであり、疲労するから筋発達の反応が起きるのだということを私たちは十分に認識しておく必要があるのだ。
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