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6.13RIZIN決戦直前!朝倉海ロングインタビュー「優勝しなければ意味がない」

朝倉海選手

──現在のところ大晦日に準決勝、決勝が行われる予定ですが、大晦日に勝ち残る自分以外の3名も、すでに想定している?
海 それはさすがに、まだです。トーナメントの山組みが決まっていたら、ある程度までは想像できるんですけどね。ただ、はっきり言って他の15人の実力は拮抗していると思っているんです。だから、これは本当に正直な話、誰が上がってきてもいいし、次に誰とやってもいいと思っています。
──それでは、1回戦の組み合わせで、気になるカードや、興味のあるカードはありますか?
海 うーん、興味があるということで強いてあげるなら、石渡選手と井上選手の試合が一番面白いかなと思いますけどね。
──ファンの間でも井上直樹vs石渡伸太郎の一戦は新旧強豪対決として、おそらく一番注目されています。海選手の勝敗予想は?
海 井上選手が勝つんじゃないかなと思いますけどね。石渡選手は怪我から復帰したばかりですし、1年以上ブランクがあって練習できていない期間もあると思います。その間に、井上選手は試合をしていて勢いもあるので、井上選手かなと。
──井上選手は昨年(20年)2月のRIZIN初参戦以来、渡部選手や元谷友貴選手にも一本勝ちするなど3戦全勝。のびしろへの期待も含めて優勝候補の一角にあげる声は多いですし、海選手との対戦を望む声もとても多いです。
海 井上選手に関しては、RIZINに出てきた頃から試合はほとんど見ていますが、やっぱり技術が高いですし、打撃も寝技もできる選手ですよね。また、たしかにここ最近は成長もしてきている。警戒はしないといけない相手なのかなと思っています。たぶん、元谷選手に勝った試合で、みんなの評価が上がっていると思うんですけど。何だろう。強いけど、そこまでみんなが言うほど、めちゃくちゃ強いわけでもないのかなと思っていますけどね。だから、けっこう過大評価されているのかなというのが僕の印象です。
──試合を見て、強さを感じると同時に穴も見つけている?
海 穴はもちろんあるし、そこまで脅威には感じていないですね。
──では、他に強いと思う相手、やりづらい相手は?
海 特にいないですね。
──たとえば、まったく知らない選手とか。
海 それも、いないですね。トーナメントでメンバーが決まった時点で全員の試合は見たので、だいたいは分かっています。
──メンバーのうちで過去に対戦経験があるのは扇久保博正選手だけですね(20年8月の『RIZIN.23』RIZINバンタム級王座決定戦で1RTKO勝利)。
海 だから、というわけじゃないけど、やっぱり15人のなかでは扇久保選手が一番強いのかなと思っているんですよね。打撃と寝技が全部できるのはもちろんですけど、試合の組み立て方がうまいです。どんな状況でも競り勝つ強さを持っているし、経験値もある。試合構成がすごく上手いなと思います。
──経験値の部分は、井上選手にとって課題であり、のびしろもそこかもしれませんね。
海 そうですね。僕的には扇久保選手が強くて、あとは拮抗しているという図式なので、誰を意識するというより、僕は僕でやるべきことをやっていたら問題ないなという感覚ですね。
──現在の練習についてですが、昨年末の堀口戦後から、どのように内容を変えてきましたか。
海 BRAVE GYMの方をはじめ、いろいろなジムの方が練習に来てくれて、一緒に練習しながらお互いの技術を共有しています。レスリングに関しては宮田(和幸・BRAVE代表)さんが指導してくれて、練習のなかでいいところ、悪いところをアドバイスしてくれたり、新たな技を教えてもらったり。それは新たに増やしたトレーニングですね。フィジカルトレーニングもそれに応じてメニューを変えたりしています。自分の穴を潰していくのはこれまで通りですが、同時に得意なところを伸ばすこともやっています。
──堀口戦の直後には、「練習環境を変えるために、海外に練習に行きたい」という発言もしていました。
海 堀口選手と戦ってみて、チームとしての分析力や、純粋に堀口選手の強さを見たときに、やっぱりそう思いました。練習環境を変えたほうがいいんじゃないかという周囲の声も多かったですし。そこも、本当にいろいろ悩んだんですよね。海外に移住して、大きいジムに入ってトレーニングを積んだほうがいいのかなと。でも、いろいろ悩んで、考えた結果、「日本でもっとできることがあるな」ということに気づきました。このトライフォース赤坂の練習環境もそうですし、宮田さんなど専門分野の人に一つひとつの技術を教えてもらい、高めてもらうこともできるなって。考えたら、日本にはボクシングでもレスリングでも世界的にトップの方や、トップクラスの方が多いんですよね。
──宮田代表は、言わずと知れたレスリングの元オリンピアン(シドニー五輪フリースタイル63㎏級)ですし。
海 僕が専属で打撃を見てもらっている佐々木(修平)トレーナーも、内山高志さんや井岡一翔さんというプロボクシングの本当に強い世界チャンピオンのトレーナーでもありますし。そういう指導者や選手が日本に揃っているのに、その方たちから習っていないことは、まだたくさんあるなって。
──国内でも、まだまだできることはあると思い至ったのですね。
海 海外に行けば強くなるというのはある意味、単純な考え方なんですよね。だったら、みんな強くなるはずですし。それに、海外に行くことによって生じる障害もたくさんある。言葉の壁もそうですし、セコンドにしても信頼関係で成り立っている部分が大きいですよね。僕がパッと行って新しいコーチに見てもらって、セコンドについてもらったりアドバイスをもらったりしたら強くなるかというと、そういうものじゃないと思うんです。だから、日本で環境を整えることでも勝負できるなと感じましたし、実際にその意識で練習に取り組んだら、まだまだ知らないことだらけでした。
──10年間、格闘技に取り組んでいても?
海 はい、いっぱいありましたね、まだまだ。レスリングの細かい技術や、感覚的に何気なくやっていた動きにしても、しっかり理屈として聞くことで、より確実なものとして身につけることができています。あとは、そもそも自分の認識が間違っていたということもありましたね。また、これまで自信をもっていたボクシングでも、トレーナーのもとで伸ばせる部分がたくさん見つかったし、RIZIN以外のプロモーションを含めて、海外でも活躍している近い階級の選手に来てもらったりして、一緒に練習することでも技術を得ていますね。
──堀口戦では敗因である「カーフキック」が大きな話題になりました。カーフキックの被弾については、試合直後に「盲点だった」と語っていますね。
海 そうですね。堀口選手のタックルやパンチを一番警戒していたので、ローキックが来ることは想定していましたが、脚がおろそかになっていたのは確かです。本当に、あの試合はカーフキックですべてが終わったというか、カーフキックに対するディフェンスの甘さだったり、あの踏み込みでカーフキックが来ることを想定していなかったことが、完全に敗因だったなと。考えてきたことが全然出せなかったので、もっとああしておけば、こうしておけばというのがすごく残った試合でした。
──目標としては、今回のバンタム級トーナメントで優勝して、堀口選手へのリベンジを果たした上で海外挑戦というステップですか。
海 そうなると思います。ただ、堀口選手にリベンジするためにこのトーナメントに出ているわけではないです。出場する理由は、純粋に僕が出て勝ち進んでいけば格闘技界が盛り上がるということと、海外に挑戦するためにも日本で応援してくれている人の評価を取り戻したいという思いからで、リベンジの挑戦権を得るために出場したわけではないです。
──目線の先には、あくまで〝世界〟がある。
海 そうです。その途中にリベンジがあるなら、避ける理由はない。世界チャンピオンを目指していく過程で堀口選手と対戦することがあれば、しっかりと倒したいというだけですね。
──堀口戦の前には「海外トップクラスと対等に戦える自信がある」と言っていました。その自信は今も変わらないですか。
海 変わらないですね。自信はあります。
──RIZINで対戦し1勝1敗と競り合ったマネル・ケイプ選手は、新たに契約したUFCで現在2戦2敗。今年3月のマテウス・ニコラウ戦は、判定1‒2というジャッジに異論が出てきてはいますが、まだ結果は残せていませんね。
海 2試合とも見ましたが、本来の動きが出せていないなという感じはしましたね。本来の強みである荒々しさだったり、のびのび戦うファイトスタイルだったりが、UFCに行ってからは出せていないのかな、ちょっと硬くなっているなという印象を受けました。

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