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ベンチプレス世界女王が筋肉隆々の肉体を披露 ブラジルから出稼ぎに20歳で来日

小林ナオコさん「この人にできるなら、私もやれる」。この物怖じしないマインドで、ベンチプレス競技の世界記録を更新し、長年女子パワーリフティング競技の第1線で活躍してきた小林ナオコ(こばやし・なおこ/54)選手。2023年の12月に開催されたゴールドジムJAPAN CUPでは大澤直子審査委員長から「筋肉量は女子カテゴリー選手の中で日本一」と評されるほどの肉体を披露し、見事2位を獲得した。2019年にはベンチプレスで一般47kg級で103kgを上げ世界一にも輝いたほどの実績を持つ小林選手だが、トレーニング開始以前は育児と仕事に追われており、いつもイライラしていたという。そんな中で小林選手が運動やトレーニングを開始したきっかけになった娘からのある一言とは?

【写真】小林ナオコさんがボディコンテストで見せた「筋肉量日本一」と評された身体

大腸がんの父の治療費のために来日

小林選手は1990年にブラジルから来日。日本で働きづめの日々を送っていた。

「ブラジルの父が大腸がんを患ってしまい、その治療のお金を稼ぐために私と妹と母の3人で日本に来ました。私が20歳で、妹は17歳のときです。初めは長野県のインスタントカメラを組み立てる工場で働き始めました」

「4年間仕送りを続けたのですが、結局父は帰らぬ人になってしまいました。手術は一応できたのですが、もう手遅れだったみたいで。日本に来てから色んな県を転々としていたのですが、その後2001年に結婚し、神奈川県の平塚に落ち着きました」

『私は大人になったらタバコは吸わない。身体に悪いから』

小林選手と娘さん

小林選手と娘さん

結婚し、子どもも授かった小林選手。娘からの一言がトレーニング開始のきっかけに。

「そのころ、私はタバコを吸っていたんです。子どもたちはまだ小さかったのですが、子育てと仕事でいっぱいいっぱいの状況で。ある日いつも通りキッチンでタバコを吸っていたら、娘から『タバコって美味しい?』と聞かれました。その質問に私は答えられなかったんです。そしたら娘が『私、大人になったらタバコは吸わない。身体に悪いから』って言われたんです」

「次の日には家にあった全てのタバコを捨てていました。私はいつもイライラしていて、文句ばかり言うわがままな女性だったと気づいたんです。そこでタバコをやめ、夜に平塚総合公園でランニングをするようになりました」

その後、次第にトレーニングを始めるようになった。

「ある日、平塚の体育館で軽くトレーニングをしていると、みんなが集まってワイワイ楽しそうにトレーニングしている輪があったんです。『楽しそうだなぁ』とずっと見ていて、次第にそこに加わってトレーニングをするようになりました」

 

幼少期にブラジルで培ったパワー

平塚総合体育館でのトレーニング時代

「そんなある日、体育館でトレーニングしていたときに渡辺さんという方が近づいて来て『ベンチプレスやってみない?』と言われたんです。私はそれまでテキトーにトレーニングしていたのですが、少しぽっちゃりして脚も太く、力が強かった私に素質があると思って声をかけてもらいました。そこからベンチプレスにのめり込む日々が始まりました」

ベンチプレスを始め、どんどん成長していった小林選手。

「2011年に初めてベンチプレスの県大会に出場し、優勝できました。そしてその2年後には、自己記録を20kgほど上げて日本記録を出すことができました。その頃はひたすら練習していて、特にテクニックを磨いたというわけではなく(笑)、力をどんどんつけていっていたんですよね」

そのパワーの秘訣は幼少期のブラジルでの経験にあった。

「もともとブラジルにいた頃は父のブドウ農家の手伝いをずっとしていたんですよ。忙しい時期だと朝から夜までずっとたくさんのブドウを背負って出荷するので、そこで力がついたのかな?(笑)。ただスポーツはずっと好きで、運動をよくする子供だったのでその影響もありますかね」

ベンチプレス競技やパワーリフティングにのめり込んでいた小林選手だが、2017年と2018年、そして2023年にボディコンテストの女子フィジークに出場している。その経緯とは?

「その後、体育館のジムから平塚のジムに移り、トレーニングをしていました。そこではボディビルに出場する方々がポージング練習をみんなで行っていて、またまた『楽しそうだなぁ』と(笑)。私も混ぜてもらって一緒にポージングを取るようになり、次第に女子フィジークに出場する流れになりました」

「2017年に神奈川県女子フィジーク選手権で優勝、2018年はジャパンオープンの女子フィジークで優勝できました。食べることが大好きで減量が苦手だったんですが、何とか勝つことができました。先月のゴールドジムJAPAN CUPはそれ以来なので、約5年ぶりの出場でした」

 

「この人にできるなら、私もやれる」が強さの秘訣

小林選手がこれまでに獲得してきたメダルやトロフィー

女子フィジークでも全国レベルの大会で優勝し、ベンチプレスでは世界記録を更新した小林選手。その強さの内側には、強靭なマインドがあった。

「2019年から2022年まではパワーリフティングに専念していました。2019年には世界クラシックベンチプレスに出場し、一般47kg級で103kgを挙げることができ、世界記録を更新して優勝することができました。その後2022年には全日本ベンチプレス選手権に初めてフルギアで出場し、28年間無敗だったレジェンド・福島友佳子さんに競り勝って優勝できました。当日は一般47kg級で132.5㎏を出すことができました」

小林さんは『最後までやり切る』ことを特に意識しているという。

「初めて女子フィジークに出場した2017年も、減量が辛すぎて途中で投げ出そうと何度も思いましたが、『ここで投げ出したら何も残らない』と思い、最後までやり切りました。練習にしても何にしても、その点は意識しています」

「また、特にパワーリフティングは、現在どんなにすごい記録を持っている人でも、最初は20kgバーから始めたと思うんです。常にそう思っているから、どんなにすごいとされる人と戦うことになっても、『この人ができるなら、私もやれる』と考えています。そのマインドと、あとは周りのサポート。試技中に声掛けしてもらったりと、周りの協力のおかげで結果を残してこれたと思います。特にサポートしていただいた横浜k’sジムさん、パワエリジムさん、湘南BPさん、NUTRIFORMATeamさん、Aurino de Lima Júnior (body make coach)さんには感謝しています」

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取材:FITNESS LOVE編集部 撮影:中島康介 写真提供:小林ナオコ

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