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北島康介、現役時代のトレーニングを語る 「水に入る時間を削って筋トレをすることに抵抗はなかった」

常に、長期的な視点で今を捉える

北島康介氏

──よく言われることですが、身体が大きくなることによるパフォーマンスへの影響を不安に感じることはなかったですか。

北島 ありましたけど、今日やったものが明日の成果として返ってくる世界ではないじゃないですか。トレーニングに限らず競泳の記録も同じ。1週間めちゃくちゃ頑張ったから次の週が爆発的に良くなるというものでもないので、良い意味での諦めというか、そういうものだろうと。オリンピックは4年周期なので、常に長期的な視点を持って、目指すところから逆算しながら、自分が今どういうフィジカルであるべきか、そしてどういうメンタルであるべきか、を考えていきました。

──気持ちもコントロールした。

北島 正確に言うとコントロールというか、正直にいるようにしました。気持ちが落ちるとトレーニングにも練習にも身が入らないことを、僕はオリンピックを通じて経験をしてきました。やる気がないのにやる気を出そうとしてもしょうがないですし、そこで無理をしても、ケガにつながるだけだとわかっていたので、メリハリをつけて臨んでいましたね。

──どうしても気が乗らないときもあったかと思います。

北島 やらなければいけないときに、背中を押してくれるストレングスやスイミングのコーチ・監督の存在は大きかったです。自分のさじ加減ではどうしても甘えが出て、2歩先まで進めないときが絶対に来ます。だから自分が良かれと思っていても、常に周囲に意見を求めて、場合によっては違う選択をする覚悟を持ってきました。知識や経験は外からもらうもののほうが多いですからね。

──そうして取り組んだトレーニングが、競技のどの部分に活きたかを教えていただけますか。

北島 前提として、競泳は水抵抗で減速していく競技です。スタートの蹴り出しが良くても、入水角度が悪ければ失速しますし、平泳ぎで言えば下半身が重要だからと筋量をアップすれば肥大したぶんだけ水の抵抗を受けてしまう。言葉にするならば「いかに低抵抗で、水中で最大瞬発力を高められるか」になるんでしょうけど、実際のところはなかなか解説が難しいと思うんです。平泳ぎ以外にも種目はありますし、当然個人差も出てきますし、競泳に特化したトレーニングを体系化・言語化するのはもう少し時間が掛かりそうだな、という印象ですかね。

──競泳界は、記録の進化が止まらない印象があります。

北島 進化し続けています。僕でもついていけないような世界になってきていると感じますよ。かろうじて平泳ぎに関して言えば、かつては下半身を推進力として前進させていくのが主流でしたが、今は上半身を軸にいかにボディポジションを落とさず水の上でパワフルに進んでいくか、という泳ぎに変わってきています。それに伴い、選手たちの身体づくりも当然ながら変わってきていますよ。

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